2019年8月29日

「近くに弁護士がいる」ということ

弁護士 水口 匠

  「弁護士との顧問契約」というと,どのような印象をお持ちになるでしょうか。
 おそらく,これまで弁護士と顧問契約をしていなかった会社であれば,弁護士に相談したり依頼する必要が生じることが多くないと考え,無用の長物と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
 今回は,特に中小企業における弁護士との顧問契約の意味について考えてみます。

本当に必要か?

 弁護士の数は,一昔前に比べて爆発的に増加し,今や日本に4万人以上もいます。そして,弁護士へのアクセスも格段に良くなり,このコラムのようにインターネットを開けば弁護士の情報は簡単に手に入るようになりました。
 そうすると,わざわざ毎月顧問料を支払ってまで弁護士と顧問契約を結ぶ必要性に疑問が生じます。日々の業務の中で法的なトラブルが発生したときに相談すればいいじゃないか,と思うかもしれません。

 しかし,当たり前のことですが,会社は業務の内容や規模,従業員の数や雇用形態,取引先との付き合い方や契約内容,それに内情など,すべてにおいて千差万別です。そうなると,いざ問題が起こったときに,初めての弁護士に相談しても,その弁護士は会社の中身のことを何も知らないため,前提としていろいろなことを聞かなければなりません。しかし,1回の相談というのは時間に限りがありますし,弁護士側が1回で理解できる内容にも限界があります。そうすると,せっかく相談を受けても,必ずしも適切なアドバイスが得られないということも十分に考えられます。

 その点,顧問弁護士であれば,その会社の特色や内情をある程度把握しておくことができますので,前提としての聴き取りは最小限に済み,すぐに本題に入ることができます。しかも,1回の法律相談にかけられる時間も一般の場合とは異なり長く取れますし,無料で相談を何回でも受けられます。電話での相談で事前に聞いておくこともできます。

 また,顧問契約は継続的な契約であるため,契約当事者間に信頼関係が築けていることが基礎となります。そのため,小さなことだと思われるようなことでも気兼ねなく相談することができます。 
 これは,当たり前のことですが意外と重要なことです。主観的に小さなことだと思っても,それが実際に小さいかは分かりません。

 どんな場面で役に立つか

 では,顧問弁護士がいた場合,会社業務におけるどのような場面で役立つことになるのでしょうか。

 この点に関しては,もっとも役立つ場面というのは,ずばり「日常業務」においてだと思います。

 たしかに,弁護士というと,法律的なトラブルが生じた場合にそれを解決するというイメージがあります。そして,個人様の依頼の場合は,ある程度正しいと思います。
 しかし,会社の顧問弁護士の役割という観点でいえば,「リスクの事前回避」が中心的業務であり,真骨頂といえます。なぜなら会社業務というのは,日常的に取引先と契約を結び,履行し,人を雇って働かせて給料を渡すなどして,常に債権や債務を発生させており,法律的なトラブルが生じる場面は,個人の場合と比べて圧倒的に多いためです。
 もちろんリスクの事前回避を行ったとしても,トラブルの発生は不可避的に生じます。しかし,これを行わなければ,トラブルが発生する確率や数は格段に高まりますし,発生した後に適切に対応することも難しくなります。

 一例をあげると,いわゆる「働き方改革」として,今年の4月に労働基準法を始めとする,労働に関する法律が改正されました。その中の一つとして,一定の従業員に対し年5日間の有給休暇の付与義務が会社に課せられることとなり,これに違反した場合には罰則も規定されています。(働き方改革の具体的な内容につきましては,守重弁護士のコラム「働き方改革関連法施行!」 をご参照ください)

 法改正の是非については,ここでは置いておくとして,この改正は従業員を雇っていればどの会社にも当てはまるとても大きな問題であることは間違いありません。このような新たな制度に対応しなかったことから労務関係でのトラブルが生じたり,関係官庁から指導や罰を受けたりすることも考えられます。そうなると,金銭的な損失のみでなく,時間,労力,さらには会社のイメージも大きく損なうことになりますし,問題が発生した後では対応は困難です。しかし,顧問弁護士がいて,あらかじめ対応策を練っておけば,このような憂いは無くなります。

 もちろん,トラブルが発生した後にこれを解決に導くことも,弁護士としてとても重要な業務ですが,顧問弁護士としての一番の存在意義はまさに上のような点にあると思うのです。

弁護士を使うことなんてない?

 このように見ていくと,冒頭で書いた「弁護士に依頼することなんてない」というのは,顧問弁護士の役割を一方的な面からしか見ていないことがお分かりいただけると思います。
 コンプライアンス(法令順守)という言葉が,今や一般的になり,さらにコンプライアンスに対する社会の監視の目も一層厳しくなっています。
 信頼できる弁護士が近くにいるということが,これからの会社経営においてはますます重要になってきます。
 転ばぬ先の杖を考えてみてはいかがでしょうか。

 

※このコラムにおける顧問契約の内容は,当事務所における顧問契約を前提としています。事務所によって顧問契約の内容は異なりますので,ご了承ください。

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