2019年3月19日

後遺障害等級認定の手続き

弁護士 近藤 永久

1 後遺障害とは?

「後遺障害」とは、

治療を継続してもこれ以上症状が改善する見込みがない状態になったときになお残っている
精神的・身体的な症状で
労働能力の喪失を伴うもののうち
自賠責保険において後遺障害等級が認定されたもの

 のことをいいます。

 なお、上記①の状態を「症状固定」といいます。
 これは、文字通り、症状が固まってしまい、これ以上良くも悪くもならない状態のことを指します。症状固定のタイミングについては、医師の判断によることが原則です。

 症状固定後もなお残存する症状に伴って生じる損害については、「後遺障害」の問題として評価することとされています。
 具体的には、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛は「後遺障害慰謝料」として、当該障害に起因する労働能力喪失に伴う損害は「後遺障害逸失利益」として、加害者側に請求していくこととなります。

2 後遺障害等級の認定は、どのようになされる?

〈審査機関〉

 後遺障害の審査は、自賠責保険から、損害保険料率算出機構という組織に委託されています。実際に審査を行うのは、同組織に所属する、自賠責損害調査事務所になります(以下、「調査事務所」といいます)。(※1)(※2)

(※1)なお、後遺障害の認定に高度な専門性が要求されるようなケースは、「特定事案」として、外部の専門家で構成される、自賠責審査会において審査が行われます(例:脳外傷による高次脳機能障害に該当する可能性がある場合など)。
(※2)また、(※1)の特定事案以外でも、等級認定に難しい判断が要求されるようなケースは、調査事務所の上部機関である本部・地区本部において審査が行われます。

〈審査基準〉

 調査事務所は、被害者の後遺障害が、自動車損害賠償保障法施行令2条及び別表後遺障害別等級表上どの障害に該当するか(あるいは該当しないか)の見極めを行います。見極めに際しては、労災保険の基準に準拠するものとされています。

〈審査方法〉

 調査事務所の審査は、基本的に書面審査です。調査担当者が直接被害者と面談して症状を確認することは原則としてありません。
 特に、後遺障害診断書の記載内容は重要視されます。
 後遺障害診断書は、主治医に作成していただくこととなりますが、医師は、後遺障害診断書作成のプロではありません。医師は、あくまで治療の専門家であって、後遺障害という、いわば損害賠償の問題についての専門家ではないため、当然ですね。
 適切な後遺障害等級を認定してもらうためには、自賠責保険の審査基準をふまえ、症状に応じて、必要な検査結果等を過不足なく記載する必要がありますが、こうした記載方法の詳細については、弁護士の専門分野となってきます。
 そのため、後遺障害診断書の作成にあたっては、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

〈審査に要する期間〉

 最新の統計(※2017年度 自動車保険の概況 参照)によれば、被害者請求にて後遺障害申請を行った事案のうち、約80%が、1か月以内に調査終了となっています。また、調査終了までに3か月以上かかる事案は、約4%にとどまっています。

  もっとも、この統計には、調査事務所の上部機関である本部・地区本部における審査日数は含まれていません。そのため、本部・地区本部での審査に回されるような、等級認定の判断が難しいケースについては、より多くの時間がかかってしまうと考えていただいた方がよいかと思います。

〈申請の方法〉

 後遺障害の申請方法は、以下の2通りです。
 後遺障害申請時期の目安は、一般に、受傷から半年以上が経過した時点とされています。

■事前認定

 加害者側の任意保険会社に申請手続をお任せする方法です。
 この場合、後遺障害診断書さえ作成できれば、その他の必要書類(医療記録など)の準備は全て加害者側保険会社が行います。

(メリット)

  • 手続面での被害者の負担が小さい
  • 症状固定から申請にこぎつけるまでの期間や、審査そのものに要する時間が比較的短くてすむ

(デメリット)

  • 申請時に、「一括社意見書」という被害者にとって不利な内容の意見書が添付されるため、等級認定の可能性が低くなる
  • 等級が認定された場合でも、すぐに自賠責から支払われる保険金を受け取ることが出来ない(示談まで、加害者側保険会社が保険金を預かる形になります)
■被害者請求

 被害者が直接、自賠責保険に申請をする方法です。
 この場合、必要書類の取り寄せから申請まで、全て被害者が行うこととなります(費用も被害者負担です)。

(メリット)

  • 事前認定の場合のような、被害者に不利な意見書が添付されない
  • 被害者側において、審査機関により正確に被害の実態を伝えるための書類(意見書等)を添付するなどの工夫ができる
  • 等級が認定された場合、被害者が自賠責から支払われる保険金を直ちに受け取ることが出来る

(デメリット)

  • 被害者にとって手続面の負担が大きい
  • 申請にこぎつけるまでに,時間がかかりがち

 

 事前認定と被害者請求、どちらの方法によるべきか?というご相談をお受けした場合、基本的には、被害者請求によることをオススメしています。
 なぜなら、それぞれの方法のメリット・デメリットをご覧いただければ明らかなとおり、被害者請求の方が、後遺障害認定を受けられる可能性が高いからです。
 後遺障害の認定の有無により、被害者が受け取ることの出来る賠償金の額に大きな差が出てしまいます。辛い症状が残っているのであれば、それを出来るだけ適正に評価してもらうことにより、被害に見合った賠償金を受け取るべきです。

3 自賠責保険の等級認定結果に納得がいかない場合は?

 自賠責保険の判断に納得がいかない場合にとりうる方法としては、①自賠責保険に異議申立を行うか、②裁判を通じて等級を争うか、の2パターンが考えられます。

①異議申立手続について

 自賠責保険の判断に不服がある場合、異議申立という制度を利用して、等級認定について再審査を求めることが出来ます。
 手続きとしては、自賠責保険会社に対し、異議申立書をはじめとする必要書類を提出することで足ります。
 もっとも、異議申立により等級判断が覆る可能性は低いため、「納得がいかないから」という理由のみで、安易にこの手続きを利用することはおすすめしません。
 異議申立をするのであれば、等級非該当あるいは想定していた等級よりも低い等級が認定されてしまった原因をしっかりと分析するとともに、被害者側において、新たな医証(医療記録や、医師の意見書など)を収集する必要があります。

②裁判を通じて等級を争う場合について

 自賠責保険が採用している後遺障害認定の基準には、裁判所の判断を拘束する効力はないため、裁判所は、自賠責の判断に関わらず、被害の実態に応じて、独自に後遺障害等級を判断することが出来ます。
 従って、自賠責による認定があまりにも被害の実態とかけ離れており、納得できない場合には、訴訟を通じて、適正な後遺障害等級を前提とした損害賠償金を請求していくこととなります。
 実際に、自賠責保険の判断と異なる判決を下した裁判例も決して少なくありません。もっとも、裁判例の中には、自賠責が認定した等級よりも低い等級を認定したものもありますので、訴訟によって争うべきかどうかは、慎重に検討すべきです。

4 おわりに

 後遺障害の申請手続きは煩雑であり、また、適正な後遺障害等級認定を受けるためには、自賠責保険の認定基準を意識しつつ、ポイントを押さえた申請書類を作成する必要があります。
 弁護士であれば、ご相談者様の手続きに関する素朴な不安や疑問を解消しながら、被害の実態に応じて、適切な申請書類作成のためのアドバイスをすることが出来ます。
 後遺障害の申請手続きに不安がある方は、一度、弁護士にご相談されることをオススメします。

 

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