地面師
弁護士 金田 恒平
地面師という言葉をご存じでしょうか?
地面師とは、土地の所有者になりすまして架空の売却話を持ちかけ、買主から多額の売買代金をだまし取る詐欺を行う者、もしくはそのような手口で行われる詐欺行為のことをいいます。
地面師行為は詐欺罪に問われますが、そのほか、偽造書類(偽造の委任状や印鑑証明書など)を作成して用いた場合には有印私文書(または有印公文書)偽造罪及び同行使罪、登記を悪用した場合には公正証書原本不実記載罪、これらの行為が組織的・反復的に行われた場合には組織的犯罪処罰法違反に問われることもあります。
このような地面師グループを描いた映像作品として、2024年にNetflixで配信され大きな反響を呼んだ「地面師たち」というドラマがあります。
私は、今春WBCを観戦するためにNetflixに加入したことがきっかけで、遅まきながらこのドラマを視聴しました。
このドラマは、2017年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルにしているとのことであり、キャストの好演も相まって非常にリアルで手に汗握る面白い作品でした。
「積水ハウス地面師詐欺事件」とは、積水ハウスが地面師グループに土地の購入代金をだまし取られた巨額詐欺事件で、その概要は次のとおりです。
JR山手線五反田駅至近の約600坪の広大な敷地をもつ古い旅館の所有者を名乗る人物から架空の売却話を持ち掛けられた積水ハウスが、この土地を数十億円で購入する売買契約を締結し、売買代金を支払って法務局に所有権移転登記を申請したところ、何と登記申請が却下されてしまいました。
実は、この土地の真の所有者は死亡しており、その後、相続人により相続登記がなされたため、結局、積水ハウスは土地の所有権を取得できず、巨額の損失を蒙ることになりました。
巨大企業がなぜこのような詐欺に引っかかってしまったのかについては、
①土地の所有者の顔写真を近隣住民や知人に見せるなどの確認を怠ったこと
②土地購入の稟議書の承認にあたり、予め現地視察をしていた社長が先に承認し、他の者が承認したのは手付金の支払後だったこと
③この取引に疑問を呈した社員がいたにもかかわらず、幹部が取引相手のネガティブな情報(真の所有者名で「土地の売買契約はしていない」旨の内容証明郵便4通が届いていた)を黙殺したこと
などが挙げられています。
地面師グループは、詐欺の絵図を描く主犯格や、土地の所有者のなりすまし役のほか、物件や所有者の情報を仕入れる「情報屋」、法律の知識を活かして買主との交渉や仲介を行う「法律屋」、土地の所有者になりすます人物のキャスティングを行う「手配師」、土地の所有者になりすますための運転免許証やパスポートなどの本人確認書類や印鑑証明書などの偽造を手掛ける「ニンベン師」(「ニンベン」とは、漢字の「偽」の部首を由来とする偽造の隠語)などで構成されています。
ドラマでは、主犯格を豊川悦司や綾野剛、情報屋を北村一輝、法律屋をピエール瀧、手配師を小池栄子、ニンベン師を染谷将太がそれぞれ好演しており、見ごたえのある作品となっていました。
未視聴のかたは、是非視聴されることをお勧めします!