公正証書について(デジタル化の内容と併せて)
弁護士 今村 翔
公正証書について
公正証書とは、私人からの嘱託により、法律行為その他私権に関する事実について公証人がその権限に基づいて作成する証書をいいます(公証人法1条1号)。
法律行為に関する公正証書について
まず、法律行為とは、当事者の意思に基づき、権利義務の発生・移転・消滅という法的な効果が認められる行為をいいます。
具体的には、売買契約などの契約(複数当事者の意思表示が合致することにより成立する法律行為)や、遺言などの単独行為(一方の者の1個の意思表示で成立する法律行為)が挙げられます。
そして、法律行為に関する公正証書として、例えば消費貸借契約書や離婚する際の養育費の取り決めに関する文書を、単独行為に関する公正証書として、例えば遺言書を挙げることができます。
私権に関する事実についての公正証書(事実実験公正証書)について
次に、私権に関する事実とは、法律行為以外の私法上の権利に関する事実をいい、公証人が五感の作用で認識した結果を記述する公正証書(このような法律行為以外の私権に関する事実について作成する公正証書を事実実験公正証書といいます。)として、例えば特許権者の嘱託により、特許権の侵害されている状況を記録した事実実験公正証書などを挙げることができます。
公正証書の効力について
公正証書の主な効力として、債務名義としての効力が挙げられます。
債務名義とは、強制執行によって、実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の証書(または電磁的記録)のことをいいます。
債務名義としての効力が認められるためには、民事執行法22条1項5号によると、「金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載され、又は記録されているもの」が債務名義としての効力が認められるとされております。
このような民事執行法22条1項5号の要件を備えた公正証書を執行証書といい、執行証書には、執行力すなわち、債権者において強制執行をすることができる効力を有します。そのため、執行証書は、裁判手続を経ないで執行力の付与を受けることができる効力を有します。
デジタル化の内容について
はじめに
公証人法の改正により、公正証書作成にかかる手続きについて、主に以下の点がデジタル化されました。
嘱託(申請)について
まず、公正証書作成の嘱託(申請)について、従来は公証役場に出頭して嘱託を行っていましたが、電磁的記録での本人確認は必要であるものの、公証役場に出頭せず嘱託(申請)することが可能になりました。
ウェブ会議の利用について
従来は、公証役場に出頭し、公証人と対面して作成する方式で行っていましたが、一定の条件を満たす必要はあるものの(嘱託人からの申出や公証人が相当と認めた場合など)、ウェブ会議を利用した公正証書の作成が可能になりました。
公正証書の作成(原本)について
公正証書の作成(原本)についても、原則として電子データ(PDF形式)で作成保存され、押印が不要となり、完成した公正証書の正本・謄本については、紙の書面での発行・交付に加えて電子データでの発行・交付も可能となりました。
なお、手数料についても改正されており、少額の契約(法律行為の目的の価額が50万円以下の場合)などについての公正証書も作成しやすくなりました。
終わりに
公正証書作成にあたって、お困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。