家族法が改正されました
弁護士 鈴木 幸子
家族法が改正されました。
今回は、かなり前から改正の必要性について議論されていた「裁判上の離婚原因」についてと「夫婦間の契約取消権」についてご説明します。
裁判上の離婚原因について
協議で離婚が成立しない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて家庭裁判所で話し合うことになります(調停前置主義)。
そして、調停でも合意に達しない場合には、裁判で決着をつけることになります。
改正前の家族法(民法)は、770条1項一号から四号で裁判を提起する場合の離婚原因を具体的に例示しています。
その中で四号の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと」について、精神病にかかった配偶者に責任はないのに法律で離婚原因と認めることは道義的に問題なのではないか、離婚後の療養費や生活費はどうするのかとの観点から疑問が投げかけられていました。
一方で配偶者の精神病のため婚姻生活に不可欠の心的交流ができないとしたら、婚姻は破綻している(破綻主義)というべきではないかとの考えも時代を追って強まりました。
そこで、裁判所は、離婚後の配偶者の療養費や生活費に対する手当(裁判を提起する側の療養費や生活費を負担する資力と意思の有無、財産分与の対象となる財産の有無と履行義務の可能性、近親者その他病者を引き受ける態勢の有無、国や自治体の費用による病者の療養費や生活費の出費の可能性等)の見込みがあるかどうかについて検討して、裁判を提起した側の請求を認めるか否か判断していました。
そもそも、「強度の精神病」か否か、「回復の見込みがない」か否かは、医学的な判断そのものではなく、最終的には裁判官が判断すべき法的概念であるとされているが、なかなか難しい判断です。
四号該当性を判断せずに、破綻主義を基本とした抽象的な離婚原因である1項五号「婚姻を継続し難い重大な事由」があるか否か(婚姻関係に現れた様々の事情が考慮される)をもって裁判を提起した側の請求を認めるか否か判断している裁判例も少なくありませんでした。
そこで、今回の改正で、1項四号を削除するに至ったのです。
夫婦間の契約取消権について
改正前の家族法(民法)では、754条で、「夫婦間で契約をしたときは、その契約は、婚姻中、何時でも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」と定められていました。
その趣旨は、婚姻中は夫婦の力関係により必ずしも自由な意思にもとづかない契約がなされやすい、夫婦間になされた契約関係は当事者の愛情や道義により解決すべきものであって、これに法的拘束力をもたせて裁判沙汰にするのは家庭の平和を害する恐れがある、というものでした。
しかし、日本国憲法は、24条1項で「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」、同条2項で「・・・財産権、・・・及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」と定めており、上記の家族法の趣旨は、憲法の定める家族観に逆行するものであるとともに、そもそも信義則が求められる夫婦関係に法自ら一方的な取消権を認めるるのは如何なものかという観点から、早くから廃止すべきとの意見が強かったのです。
夫婦間に紛争がなければ婚姻中の取消権は問題にならないし、夫婦間に紛争があり、当事者間で解決できないほどに婚姻関係が破綻に瀕しているのであれば、一方が取消権を行使した場合には権利の濫用として認められません。
以上の理由から、今回の家族法(民法)の改正では、754条は削除されました。