2026年4月30日

相続における配偶者保護制度~配偶者居住権~

弁護士 水口 匠

配偶者居住権とは


配偶者居住権とは、被相続人の相続開始時に、残された配偶者が被相続人の所有する建物(または夫婦で共有している建物)に居住していた場合に、被相続人が亡くなった後も配偶者が賃料の負担なくその建物に住み続けることができるという権利です


日本社会の高齢化が進み、平均寿命も延びたことから、夫婦の一方が亡くなった後も、残された配偶者が長期間にわたって生活を続けることも多くなりました。
しかし、不動産は高額であることが多いため、相続人が複数いる場合には、配偶者が居住建物の所有権を取得してしまうと預貯金など他の財産が取得できなくなるなど、配偶者のその後の生活資金に不安が生じる事になります。
そのような事態を回避し、配偶者を保護するために相続法が改正され、令和2年4月以降に行なった遺言や遺産分割について、配偶者居住権が新たに認められるようになりました(民法第1028条以下)。
なお、この改正では、「配偶者短期居住権」も認められるようになりましたが、このコラムでは取り扱いません。

配偶者居住権は、基本的に「その居住建物に居住すること」を認める権利であるため、売却など自由に処分することも認められる所有権よりも財産的価値は低くなります。
そのため、配偶者は住み慣れた自宅に住むことができる上、他の財産もより多く取得でき、今後の生活資金の不安も軽減されることになるのです。
なお、配偶者居住権は、相続人である配偶者を対象としていることから、事実婚の場合には認められません。

配偶者居住権を取得するための条件

この配偶者居住権を取得するためには、以下のような条件が必要になります。

①相続開始の時に、配偶者が居住建物に無償で居住していたこと

「居住していた」とは、実質的に生活の本拠としていたことを言います。例えば病気で一時的に入院などしていた場合でも、「居住していた」と認められます。

② その居住建物が被相続人の単独所有か、被相続人と配偶者との共有であること

被相続人がその建物を配偶者以外の者(例えば子供など)と共有していた場合には配偶者居住権は取得できません。
この場合には、他の共有者の利益が不当に害されてしまうおそれがあるからです。

③ その建物について配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割、又は遺贈(死因贈与契約でも可能)がなされること

遺産分割は、相続人間の協議や調停、審判によって定められることになります。
また、被相続人の遺言により、遺贈することもできます。この時、配偶者が配偶者居住権の取得を望まない場合には、この遺贈を放棄することもできます。
配偶者居住権の存続期間は、特別の定めをしなかった場合には終身(配偶者が生きている間)になります。
なお、令和2年4月よりも前にした遺言では配偶者居住権は認められません。

配偶者居住権の特徴

配偶者居住権は、債権者を配偶者、債務者を居住建物の所有者(共有により所有者が複数いるときは共有者全員)とする賃借権に似た債権といえます。配偶者居住権には、以下のような特徴があります。

居住建物全体について、無償での使用及び収益の権利

無償であるところが、配偶者居住権の特徴であり、賃借権とは決定的に異なります。
もっとも、居住建物の保存のために必要な修繕費や建物や土地の固都税など、居住建物に生じる通常の必要費は負担しなければなりません。
また、「収益」とは、例えば居住しながらその建物で店を営業するといった場合を指します。第三者に使用させたり、建物の増改築をしたりする場合には、建物所有者の承諾が必要になります。

用法順守義務

配偶者は、それまで使われていた居住建物の用法にしたがって、善良な管理者の注意をもって使用・収益しなければなりません。
「善良な管理者の注意」とは、要するに「自分の家として大切に使う」といったような意味で、例えば、わざと壊したり、汚したり、水漏れがあるのに放っておくなどしてはならないということです。

譲渡の禁止

配偶者居住権は第三者に譲渡することはできません。相続開始後も配偶者がそれまでの居住環境での生活を継続することを保護する制度であるためです。

そのほか、配偶者居住権を取得した場合には、その旨の登記をすることによって、第三者に対して対抗することができます。配偶者居住権の設定登記は、配偶者と居住建物の所有者の共同申請となり、居住建物の所有者は配偶者に対し、登記義務を負うことになります。

配偶者居住権の財産的価値の評価方法

配偶者が遺産分割によって配偶者居住権を取得する場合、配偶者は自分の相続分の中から取得することになるため、配偶者居住権の財産的価値により、取得できる他の財産に影響が生じることがあります。
また、遺贈や死因贈与によって配偶者居住権を取得した場合にも、特別受益との関係で配偶者の具体的な相続分に影響が生じることがあります。そのため、配偶者居住権の財産的価値を評価する必要があります。

すでにお話ししたとおり、配偶者居住権は居住建物の使用・収益のみを認める権利であるため、所有権よりも財産的価値は低くなりますが、その評価方法は様々で複雑です。
例えば、不動産鑑定士による鑑定や相続税における配偶者居住権価額の評価などがありますが、これらは専門家に依頼することになるので、当然費用や時間がかかります。
一方、法務省が公表している簡易な評価方法もあるため、それによって配偶者居住権の価額を一応推定することもできます。

 

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