2025年に改正された風営法について
弁護士 柳沢里美
はじめに
先日、ホストであることを隠してマッチングアプリで知り合った女性を自分が働いている店に勧誘したホストクラブ従業員の男性が、全国初のアプリを悪用したホストクラブへの違法な客引き行為として逮捕されたとのニュースがありました。
これに関連する法律として、風営法の一部が改正され、令和7年6月に施行されています。
風営法とは
風営法は、正式名称「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という法律で、善良な風俗の保持・風俗環境の保持・少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止を目的として、特定の業種を対象としたルールや罰則を定めた法律です。
風営法が適用される対象となるのは、次のような営業です。
1 風俗営業
1号営業 キャバレー、待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食さ
せる営業
2号営業 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、客席における照度を10ルクス以下
として営むもの
3号営業 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食させる営業で、他から見通すことが困難であり、か
つ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むもの
4号営業 マージャン店、パチンコ店など
5号営業 ゲームセンターなど
2 性風俗関連特殊営業
ソープランド、ファッションヘルス、ストリップ劇場、ラブホテル、アダルトショップ、出会い系喫茶、テ
レホンクラブ、ツーショットダイヤル・伝言ダイヤルなど
3 特定遊興飲食店営業
ナイトクラブなど
4 深夜における酒類提供飲食店営業
バー、酒場等、深夜(午前0時から午前6時)において、設備を設けて客に酒類を提供して営む飲食店営業
風営法で規制されているのは次のような内容です。
- 営業の届出や許可制度
- 営業場所や営業時間の制限
- 店舗の構造・設備の基準、照度・騒音・振動の規制
- 広告・宣伝の規制
- 料金表示義務
- 年少者の立入禁止の表示義務
- 接客従業者に対する拘束的行為の禁止
- 客引き、18歳未満の接待禁止などの禁止行為 など
違反すると、行政処分(営業停止・許可取消)や刑事罰の対象になります。
令和7年改正の背景
今回の改正は、ホストクラブなどでホストが利用客の好意や恋愛感情につけ込んで高額な飲食をさせるいわゆる色恋営業や、代金をいわゆるツケ払いにして高額となった代金を利用客が支払えない場合には、性風俗店での勤務や売春をさせるなどの事例が多発していた背景があります。
また、ホストなどが利用客を性風俗店などに紹介した際、その見返りとして紹介先の店側から報酬が支払われる「スカウトバック」が横行し、問題視されていました。
ほかにも無許可営業の蔓延や暴力団などの反社会的組織のような不適格事業者の関与を十分に規制できていなかったという背景があります。
改正の内容
今回改正されたのは次の内容です。
◆接待飲食営業にかかる遵守事項・禁止事項の追加
次の行為を接待飲食営業を営む風俗営業者のしてはならない行為(遵守事項)として規定
- 料金に関する虚偽説明
- 客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求
- 客が注文していない飲食等の提供
次の行為を接待飲食営業を営む者に係る禁止行為として規定
- 客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫
- 威迫や誘惑による料金の支払等のための売春、性風俗店勤務、AV出演等の要求
◆性風俗店によるスカウトバックの禁止
性風俗店を営む者がスカウト等から求職者の紹介を受けた場合に紹介料を支払うことを禁止
◆無許可営業等に対する罰則の強化
無許可営業等に対する罰則
2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金 ⇒ 5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金
法人の罰則
200万円以下の罰金 ⇒ 3億円以下の罰金
◆風俗営業からの不適格者の排除
次の者を風俗営業の許可に係る欠格事由に追加
- 親会社等が風俗営業の許可を取り消された法人
- 警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
- 暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者
改正による影響
今回の改正により、店舗の事業者は違反が明らかとなった場合のリスクが非常に高くなりました。
事業者としては、改正内容を踏まえた遵守事項・禁止行為などを正確に把握し、関連会社を含めたリスク管理体制の見直しや店舗で実際に働くホストなどの従業員に遵守事項・禁止行為を周知させる措置(研修やマニュアル作成など)などの対応が求められます。
一方で利用客としては、今回の改正は利用の安心につながるものではあります。
しかし、万一、高額な料金を支払わされるなどの被害にあってしまった後では、被害の回復が難しいことも多くあります。
トラブルに巻き込まれないように注意をして利用することは依然として必要です。
おわりに
「風俗」=「性風俗」というイメージを持っている人が多く、それに関する風営法は風俗営業とかかわりがなければ自分には関係ないと思われる方も多いかと思います。
しかし、意外と多くの方が日常的に利用する幅広い業種が風営法の適用の対象となっています。
今回の風営法の改正は、事業者に対しても利用者に対しても影響を与える注目される改正であったと思われます。