2025年12月26日

共同親権制度が導入されます!

弁護士 守重 典子

そもそも「共同親権」とは?

「親権」という言葉自体は広く一般に使用されていますが、改めて説明しますと、親権とは、日常生活内で、子どもを監護・教育する権利及び義務、子どもの財産を管理する権利をその主な内容としています。
現在は、父母が婚姻中は、2人が共同して親権をおこなうこととし、離婚後は、父母の一方を親権者とする単独親権制度をとっていました。
改正により、離婚後の親権について、単独親権のほか、父母双方が親権をもつ共同親権を選択することができるようになります。

なぜ共同親権が導入されるのか

共同親権制度は、離婚後も父母双方が子どもの養育に責任をもち、子どもに関する事柄を父母双方が熟慮した上で決める事態があること等が導入の背景にあるようです。

共同親権について、父母間で意見が一致しない場合は?

離婚後に、単独親権とするか共同親権とするかで、父母双方の意見が一致せず、話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所が親権者を父母の一方とするか、双方とするかを定めるとしています。

裁判所は、どんな基準で共同親権を定めるのか

では、裁判所はどのような基準で単独親権か共同親権かを定めるのでしょうか。
この点、現在も親権者を父母のいずれとするかについて、父母間で話しがまとまらず、裁判所が判断することとなった場合の裁判所の判断基準が明確に定められているわけではありません。
しかし、子どもの利益を一番に考慮して定めると考えられており、子どもが15歳以上の場合には、子ども本人の話を聴かなければならないとする等、子どもの年齢や認識の程度に応じて、子どもの意思を考慮して親権者を定めることとなっています。


共同親権が導入された後も、このような子どもの利益を踏まえて判断するという考え方自体は大きく変わらないと考えられます。
裁判所は、子どもの利益のため、①父母と子との関係、②父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないとされています。

共同親権が認められないのは、どんな場合?

裁判所は、子の利益のために、父母と子との関係、父と母との関係等を考慮して共同親権とするか、単独親権とするかを判断しますが、以下のケースのように、共同親権とすることで子の利益を害すると考えられる場合には、単独親権と定めなければならないとされています。

①虐待のおそれがあると認められるとき
②DV等により、父母が共同して親権をおこなうことが困難と認められるとき

※②の場合は、肉体的な暴力の他、精神的な暴力も含むと考えられます。
また、現在進行形の暴力だけではなく、過去に暴力があった場合には、離婚後も暴力を受けるおそれがあるかどうかが考慮されると考えられます。

共同親権の場合でも、単独での親権行使が認められる場合とは?

共同親権とした場合でも、日常的に生じる全てのことについて、父母が共同で決めるのは実際上難しい場合や、逆に子どもの利益が損なわれてしまう場合があります。
そのため、次のような場合には、親権を単独で行使することとされています。

監護、教育に関する日常行為
・食事や衣服の決定等の身の回りの世話
・子どもの習い事の選択
・風邪薬の服用、ワクチンの接種
・高校生の放課後のアルバイト
子どもの利益のため、急迫の事情があるとき
・入学手続等、一定の期限までに親権をおこなうことが必要であるとき
・緊急に医療行為を受けさせる必要があるとき
・DVや虐待からの避難が必要であるとき
他の一方が親権をおこなうことができないとき
・父母の一方が子どもの養育に無関心となり、音信不通となってしまう場合

上記のケース以外の事項、例えば、進学先の選択や、引っ越し、子ども名義の預金口座の開設等は共同親権を行使する対象となり、協議がまとまらない場合には、家庭裁判所がその親権行使を単独でおこなうことについて、判断を求める必要があります。

共同親権が導入されるのはいつから?

2026年4月1日より施行され、共同親権を選択することが可能になります。

既に離婚して単独親権となっている場合は?

2026年4月1日より前に離婚して、父母の一方を単独親権者としている場合でも、家庭裁判所に親権者変更調停を申立てることで、単独親権から共同親権への変更を求める手続があります。
この場合には、父母の一方を単独親権者と定めるまでの話し合いの経過や、その後の事情の変更等に関する事情が考慮され、判断されます。

共同親権のメリット

共同親権を導入する意義としては、まず父母の離婚後も子どもが父母や祖父母に囲まれ、愛情を感じて成長することに資すると考えられます。
また、双方が親権者となることで、子どもと離れて暮らす親も子どもの監護に責任を感じ、ゆえに養育費の支払が促進されることが期待されます。

共同親権のデメリット

一方で、共同親権のデメリットとしては、父母の信頼関係が損なわれたために離婚に至ることが多い現状において、離婚後に子どもの親権について、双方が冷静に協議することは実際上難しいのではないかとも考えられます。
父母間で親権行使について離婚後も対立が生じ、高葛藤の状態となれば、板挟みになるのは子どもであり、子どもの利益が害されるおそれも考えられます。

また、虐待やDVのおそれがある場合は、裁判所は単独親権と定めることとしていますが、そもそも虐待やDVがあると裁判所に認定してもらうだけの証拠を揃える必要があります。
そもそも、DV等の力関係がある場合に、夫婦が対等な立場で親権の話し合いができず、家庭裁判所の関与のないまま、共同親権とすることで合意させられたというケースも想定できます。
共同親権の導入により、虐待やDV被害者の保護が後退してしまうのではないかとの懸念も考えられます。

さいごに

「離婚した後、共同親権を選択して、離婚後も親権者として子どもに関わりたい」
「相手から共同親権を求める手続が取られそう…」
など、共同親権についてお悩み、ご不安があれば、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

 

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