危険な自転車運転が厳罰化されます!
弁護士 金田 恒平
2024年11月1日に、自転車等による交通事故の防止を目的とする新たなルールが定められた改正道路交通法(以下「改正道交法」といいます。)が施行されます。
改正の背景
近時、自転車の運転中にスマートフォンを使用しながら自転車を運転(いわゆる、「ながらスマホ」)したことに起因する交通事故の件数が増加しています。
また、飲酒して自転車を運転したことによる死亡事故等の重大事故件数も増加しています。
このような状況を踏まえ、2024年5月24日に、自転車運転中の「ながらスマホ」の禁止・罰則化や酒気帯び運転の罰則化など、自転車等の交通事故を防止することを目的とした道路交通法の改正が行われ、同年11月1日に施行されます。
改正のポイント
自転車運転中の「ながらスマホ」の禁止・罰則化
自転車運転中に「ながらスマホ」をすることが禁止され、罰則の対象となります(改正道交法第71条第5号の5、同第118条第1項第4号)。
「ながらスマホ」とは、自動車等の運転中(停止中を除く)に、携帯電話を通話のために使用したり、携帯電話に表示された画像を注視すること等をいいます。
従来の道交法では、自転車運転中の「ながらスマホ」は禁止されていませんでした。
しかし、「ながらスマホ」が自転車事故の原因の多くを占めていることから、禁止され、刑罰が科されることとなりました(改正道交法第71条第5号の5)。
具体的には、自転車運転中に「ながらスマホ」をした者は、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金に処されます(改正道交法第118条第1項第4号)。
また、「ながらスマホ」や、次に述べる酒気帯び運転等の危険行為を3年以内に2回以上した者は、自転車運転者講習の受講が義務付けられます(改正道交法第108条の3の5第2項、道交法施行令第41条の3第2項)。
この講習の受講を怠ると、5万円以下の罰金に処されます(改正道交法第120条第1項第17号)。
自転車の酒気帯び運転に対する罰則の新設
酒気を帯びた状態で自転車を運転する行為(酒気帯び運転)などが、刑事罰の対象となります(改正道交法第117条の2の2第1項第3号、同条の3の2第2号・第3号)。
酒気帯び運転とは、体内にアルコールを保有している状態で車両を運転する行為です。
酒気帯び運転は禁止されています(改正道交法第65条第1項)。
ただし、酒気帯び運転の中でも、①血液1mlにつき0.3㎎以上または、呼気1ℓにつき0.15㎎以上のいずれかの濃度のアルコールを体内に保有した状態での運転は、刑事罰の対象とされています。
具体的には、自転車の酒気帯び運転をした者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます(改正道交法117条の2の2第1項第3号)。
また、①自転車運転者に対し酒類を提供した者や飲酒を勧めた者、②酒気帯び運転の自転車に同乗した者は、2年以下の懲役または20万円以下の罰金に処されます(改正道交法第117条の3の2第2号・第3号)。
なお、酒気帯び運転のうち、アルコール濃度に関係なく運転能力を欠く状態で運転する行為は、酒酔い運転となり、より重い刑罰が科されます。
自転車についても、酒酔い運転はすでに罰則対象となっています。
企業における注意点
企業では、従業員が、通勤や業務における移動の際などに自転車を用いる場合があります。
従業員が、自転車の交通違反により警察の取り締まりを受けるなどした場合、業務の停滞や企業の社会的評価の低下を招く恐れがあります。
また、酒気帯び運転では、酒類を提供した者や飲酒を勧めた者にも罰則が適用されます。
したがって、企業においては、①通勤や業務における移動の際などに自転車を利用している従業員に対して注意喚起をしたり、②酒気帯び運転についての従業員教育を行ったりすることが重要です。
また、③酒類を提供する飲食店においては、客が自転車運転者でないことの確認を行うことが重要です。
以上