2024年3月29日

よくあるご質問(離婚・相続・多重債務編)

弁護士 守重 典子

2015年に弁護士登録をしてから、早いもので今年は弁護士として9年目となりました。

今回は、これまでにお伺いしてきたご相談のなかで、聞かれることが多い(と感じる)ご質問を【離婚編】【相続編】【多重債務編】に分けていくつか取り上げてみました。

もちろん、ご相談者様のおかれたご事情によってアドバイスできる内容も異なりますので、「自分の場合はどうなんだろう…」という方はぜひ、直接事務所までご相談ください。  

離婚編

相手と離婚について散々話し合いましたが、平行線のままです。すぐに離婚裁判を起こせますか。

夫婦間で裁判外において離婚の話し合いをしていても、まずは裁判所に離婚調停の手続をとる必要があります。これを「調停前置主義」(ちょうていぜんちしゅぎ)と言います。
なぜ、このような考えが法律上とられているかというと、離婚事件をはじめとする家族に関する事件は、必ずしも法律に沿った解決ではなく、当事者同士が話し合い、納得したうえでの解決がベストであることが多いということに基づきます。

そのため、調停を経ずに離婚の裁判を提起しても、調停手続に回される可能性が高いと考えていただく方が良いでしょう。
ちなみに、相手の居場所が行方不明でそもそも話し合いができないとき等には、調停を経ずに、離婚裁判を起こすことができる場合があります。

養育費の支払を裁判所で決めて、その後相手が払わなくなってしまったときは、裁判所が相手の資産を調査してくれますか。

調停などで養育費の支払を取り決めたのに相手方が支払わないという場合、相手方の資産、例えば預貯金、給与債権、不動産等を差し押さえて強制的に財産を回収する方法をとる必要があります。 

相手方の資産が分からない、すなわち預貯金がどの金融機関にあるか分からない、どこに勤めているか分からないという場合でも、自動的に裁判所が相手方の資産を調査してくれるわけではありません。相手方の資産が分からない場合、養育費の支払請求権をもつ債権者から財産開示手続(債務者がもつ財産の開示、裁判所への出頭を債務者に通知する手続)や情報取得手続(法務局や金融機関等から、債務者の財産に関する情報を開示してもらう手続)を申立てる必要があります。

※財産開示手続、情報取得手続についてはこちらのコラム もご参照ください。

 夫の単独名義で住宅ローンを組んでいますが、離婚の財産分与で、妻もローンの支払義務を負うことになるのですか。

住宅ローンの残債を、離婚後どちらが負担するかを夫婦間で話し合う必要がありますが、あくまでそれは夫婦間での取り決めであって、取り決めの内容(例えば、ローンの支払義務者を夫から妻に変更する)を当然に住宅ローン債権者である金融機関に主張することはできません。

財産分与における持家の問題は、オーバーローン(自宅の売却金でローンが完済できない状態)であるか否か、自宅を売却するか住み続けるか、住み続けるとした場合、誰が住み続けるのか、住み続ける配偶者にローンの支払を続ける経済力があるか否か等、事案に応じて多方面から検討する必要がありますので、一度弁護士への相談をお勧めします。

 「離婚したい」といって、相手が家を出て行きました。勝手に出て行ったんだから、婚姻費用(生活費)を払う必要はないですよね。

確かに、夫婦間においては同居義務がありますが、婚姻費用の支払義務は、婚姻関係にある事実そのものから生じる義務であり、同居している状態を基礎として発生する義務ではありません。

単に無断で別居したということだけでは、社会的倫理的に非難に値する同居義務の放棄とまで評価することは難しく、婚姻費用の支払義務を免れることはできない場合が多いと考えられます。

 年金分割は、相手に支給される年金の半額がもらえるということですか。

年金分割は単純に将来もらえる年金を分けるというものではなく、婚姻期間中に納めてきた厚生年金保険料の支払い実績を夫婦間で分ける制度です。
そのため将来の年金の半分がもらえるわけではありません。また、対象となるのは厚生年金の保険料となるため。例えば配偶者が自営業者で、そもそも厚生年金に加入していない場合は、年金分割の対象外となります。

 相続編

遺産分割はいつまでにやらなければいけないですか。

遺産分割自体に法律上の期限はありません。

しかし、遺産分割に関連して期限が決まっている事項は多数あるので注意が必要です。
例えば、相続放棄は相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内、相続税の支払いは亡くなった方の死亡を知った日の翌日から10カ月以内、遺留分(最低限相続できることが保障された相続分)を侵害されたとして遺留分侵害額の請求をできるのは、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年という期限があります。

なお、202441日より、相続により不動産を取得したことを知ったときから3年以内に不動産の相続登記をすることが義務化されました(詳細はこちらのコラムを参照ください)。

 亡くなった父(母)の預金残高が分かりません。

相続人であれば、亡くなった方(被相続人)が死亡した時点の預金残高が分かる残高証明書の発行を、金融機関に単独で請求することができます。被相続人の預金を、生前、他の相続人が管理していて、管理方法に疑念があるような場合には、残高証明書の発行申請と併せて、過去に遡った取引記録の取寄せ手続もおこなう方が良いでしょう。

上記書類の請求をおこなうにあたっては、被相続人の死亡の事実が分かる戸籍謄本や除籍謄本に加え、被相続人と申請者の関係(相続人であること)が分かる戸籍謄本等が必要となります。
なお、この点について、202431日より戸籍法の改正により、戸籍の広域交付制度(※1)が施行されました。この制度の施行により、本籍地と異なる市町村役場でも戸籍謄本を請求できることとなりました。広域交付制度で請求できる戸籍謄本は、本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母など)・直系卑属(子・孫など)となっており、兄弟姉妹やおじおば等は対象外となっている等の制限はありますが、揃える必要のある戸籍の本籍地が各地に点在していても、一か所の市町村役場の窓口で完了できるという点で、これまでより戸籍の取り寄せが簡易になったと言えます。

(※1)参照:法務省HP「戸籍法の一部を改正する法律について」https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf

 

 多重債務編

破産手続をおこなえば、必ず借金の返済がなくなるんですか。

借金の返済を免除してもらうことを免責(めんせき)といいます。この免責を裁判所に認めてもらうことによって借金の支払義務が法的に免除されますが、税金の支払いや養育費の支払い等、免責の対象外となっている請求権があり、これらの支払義務は破産手続をおこなってもなくなりません。

また、浪費やギャンブルによって借金を作った場合や、返済能力がないのに借入れをした場合等、法律上、免責が認められない事項が定められています(「免責不許可事由」と言います)。
免責不許可事由に該当する行為があっても、免責が認められないわけではありませんが、破産管財人という、裁判所が選任する弁護士による財産調査や家計管理等をおこなう事件の対象となる可能性が高いでしょう。

 破産すると、戸籍に破産したことが書かれるんですか。

破産手続をおこなうと、官報という、国が発行する機関誌に破産者の氏名・住所等が掲載されますが、戸籍に自己破産の記録が載ることはありません。

 破産すると、家族や会社に破産することがばれてしまうのでしょうか

上の回答のとおり、破産すると官報に掲載されますが、官報は毎日発行され、情報量も多く、またどこでも閲覧できるものでもないので、官報へ掲載されることで直ちに家族や会社に知られてしまうことはほぼないと考えて良いでしょう。

ただし、破産を申立てる際、例えば同一世帯で家計の収支を一にしている場合は、ご本人の収支状況だけではなく、ご家族の収支も含めて裁判所に報告する必要があります。
また、勤務先から借入れをしている場合には、勤務先も債権者として破産手続上扱う必要がありますし、退職金の発生が見込まれる場合には、会社から退職金計算書をもらうあるいは退職金規程を入手する必要があります。
このように事案によっては、ご家族や勤務先に一定の協力を得る必要があります。

 ■破産すると、車はどうなりますか。

まず、自動車ローンが残っており、車検証の所有者欄に自動車販売会社や信販会社になっている等、所有権留保がついている場合には、自動車は引き揚げられてしまう可能性が高いでしょう。

自動車ローンが残っておらず、車の評価額が20万円以下の場合には、車を手元に残せる運用が取られています(※2)(もっともその場合でも、預金等、手元に残したい他の財産の合計額が99万円を超える場合は、99万円を超えた部分について破産管財人に支払う「財団組入」(ざいだんくみいれ)という手続をとる必要があります)。

一方、車の査定額が20万円を超える場合は、原則換価の対象となります。もっとも、他の財産と合わせて99万円を超えない場合には、破産する方が引き続き車を使用する必要性や相当性の事情を明らかにし、引き続き車を使い続けられる場合もあります。

 

(※2 さいたま地方裁判所の場合)

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