2023年8月31日

共用部分と構造上一体となった専有部分の管理について(区分所有マンション)

 弁護士 河原﨑 友太

はじめに

区分所有マンション(いわゆる分譲マンション)では、一定年数ごとに大規模修繕を行うなどして建物の維持管理を行います。
今回は、この大規模修繕に関連してご相談を受けることの多い、共用部分と一体となって管理すべき専有部分にまつわる話をしたいと思います。

専有部分と共用部分の各管理者と費用負担

区分所有マンションは、構造上、専有部分と呼ばれる各住戸の区分所有者単独の所有部分(●号室というような住戸番号が付された住戸)と、共用部分と呼ばれる区分所有者で共有する部分(外壁や共用廊下など)とに区別されます。

専有部分は、当該住戸の所有者の持ち物であるため、自己の費用負担において(原則として[1])制限なく変更を加えることができます。
例えば防音の部屋を作ってみたり、部屋のレイアウトを変えてみたりといったことを自由にすることができます。

 

他方で、共用部分については、区分所有者の共有状態にあるため、各区分所有者が勝手に変更を加えることはできず、各区分所有者で構成される管理組合において判断することになります。

皆さんの共有なので、皆で決めましょうというルールになっています。

この共用部分の変更や維持に要する費用は、管理組合において負担することになります。 

 

共用部分と構造上一体となった専有部分の管理

以上が原則としてのルールですが、実際には専有部分と共用部分が構造上一体になっているようなことがあります。
例えば、給水管などは、本管から各住戸メーターを含む部分までは共用部分で、その先は専有部分とされていたりします。

このような、構造上は共用部分と専有部分が一体となっている設備に関して、誰が管理をするのか、誰が費用負担するのか、専有部分を先行して工事した者への対応をどうするのかといった問題が生じます。

管理組合が専有部分の管理を行うことができるか

先に述べたとおり、専有部分の管理は、専有部分の所有者がその責任において行うことになります。
したがって、原則からいえば、管理組合が専有部分たる配管を工事することはできません。

ただし、専有部分とはいっても、給排水管は共用部分たる本管などを通じて他の区分所有者の専有部分と繋がっており、構造上は一体の設備になっています。

そのため、例えば、管理組合が主体となって共用部分の配管工事を行って適正に管理をしていても、専有部分の配管工事が長期間に渡って実施されていないような状況では、当該専有部分の配管から漏水等の問題が生じた場合に、当該部分だけの問題に留まらず、共用部分や他の区分所有者の専有部分への影響が出かねません。

このことから、通常、各管理組合においては、共用部分と構造上一体となった専有部分については管理組合が一体して管理することができる旨の規約を定め、当該規約に基づいて、共有部分の配管と専有部分の配管とを一体のものとして管理できるようにしておくのが一般的です[2]

したがって、専有部分たる給排水管の部分について管理組合が管理することができるかという問題については、管理規約にその旨を定めておくことで可能となります。

費用負担の問題

次に、上記規定に基づいて管理組合が一体工事を行う場合において、専有部分の工事費用をだれがどう負担するかという問題について整理します。

この点もすでに述べたとおり、専有部分の工事費用は各区分所有者が負担するのが原則であり、管理組合は負担しません。

しかしながら、上記のような配管工事に際して、原則どおり専有部分に相当する部分については各区分所有者の負担とした場合、経済的な事情等により費用負担しないという人も出てくるかもしれません。
費用負担できない人の専有部分だけを実施しないということになれば、結局は一体管理しなければならないはずの配管について、その一部に不具合が生じてしまう可能性を排斥できなくなってしまいます。

したがって、この点についても、管理組合の費用負担において専有部分の工事を行うことは否定されないと解されます。ただし、規約上、このような場合に専有部分への支出を可能とする規定を創設しておくべきと考えます[3]

先行実施者がいる場合にどうするか

さて、発展の問題です。
実はこの部分のご相談が増えて来ています。

専有部分の管理は各区分所有者の責任ですから、管理組合が一体管理として工事を行う以前に各区分所有者において工事を先行実施している場合があります。

この場合において、管理組合の費用負担で専有部分も含めた一体工事を行うと、先行実施者は自らの費用負担で実施したのに、管理組合主導で工事を行った所有者は管理組合の負担(実際には管理費や修繕積立金が充てられます)で行うという点において不平等が生じることになります。

不平等を完全に解消する必要はないと考えますが、他方で、この不平等に何も手当をしなかった場合には、先行実施者からの不満が出て来てしまい、管理組合内部での紛争に発展しかねません。

したがって、専有部分を含めた一体管理としての工事を行う場合、各管理組合としては、先行実施者の有無を確認し、工事を実施する内容の総会決議を取る前に、先行実施者への補償等について議論をしてその内容を確定させた上で、この点も含めた総会決議を取られることをお勧めします[4]

工事実施後に先行実施者への補償が問題となってしまった場合には、その補償内容を巡ってトラブルが生じる恐れがありますのでご注意ください。

 


[1] 建物の躯体部分に影響を及ぼすような変更を加えることは、建物全体、他の区分所有者への影響があるため認められません。

[2] マンション標準管理規約第21条第2項参照

[3] マンション標準管理規約コメント第21条⑦には、「共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定する」と記載されています。

[4] マンション標準管理規約コメント第21条⑦には、「先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である」と記載があります。

 

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