2023年4月28日

物損事故にまつわる諸問題

弁護士 金田 恒平

物損事故に遭った場合、事故により損傷した車両の修理費用のほか、代車費用、休車損、評価損、買替諸費用などが問題になります。

これらの諸費用は、当然に認められるものではなく、示談交渉や裁判などの場面で加害者側と激しく対立することが多々あります。

ここでは、主に四輪車を想定して、代車費用、休車損、評価損、買替諸費用などの問題点について述べたいと思います。

1 代車費用

まだ修理が済んでいない場合、どのくらいの期間代車を借りられるのか、修理完了や買替えまでの代車費用が全額支払われるのかが問題となります。

代車費用は、必ず認められるわけではありません。

代車費用が損害として認められるためには、一般的に、代車の必要性・相当性として、①現実に代車を使用したこと、②代車使用の必要性があること、③代車の車種・グレード及び単価が相当なものであること、④代車の使用期間が修理又は買替えのために必要な期間であったことを立証する必要があります。

レジャー用の車両である場合、公共交通機関で代替可能な場合、被害車両以外の車両を所有している場合などは認められない場合があります。

例えば、マイカー通勤に被害車両を使用していた場合であっても、公共交通機関の利用が可能かつ相当と認められる場合、代車使用の必要性が否定されることがあります。

また、信義則に基づく被害者の損害拡大防止義務の観点から、必ずしも被害車両と同グレードの車両が代車として認められるわけではありません。

例えば、ベンツなどの高級外車の代車は国産高級車で足りるとされています。

代車が認められる期間の目安は、修理期間は1週間~2週間が通例ですが、部品の調達や営業車登録等の必要があるときは長期間認められる場合もあります。

また、買い替えを要する場合は1か月程度とされています。

【参考裁判例:横浜地判令和元年11月1日】

8月28日発生の事故で、9月30日から同年12月6日及び同月12、13、19、20、23日の5日間(計73日間)、代車を使用し、代車費用63万円余を請求した事案において、被告は、修理費見積り及び車両買換えに通常必要な期間は1~2週間程度であり、その範囲の期間についての代車費用のみが本件事故による損害と認められるべきと主張しました。

判決は、被告側保険会社が原告車の賠償額の詳細についての案内文書を送付したのは11月30日頃であること、原告が新車の発注を行ったのは、これに近接する同月29日であること、そこから新車の納車までには一定の期間を要することが推察されることを考慮すれば、原告が損害額を確認した上で、新車購入の判断をし、実際に発注の手続をとって納車に至るまでの期間として、同年12月下旬ころまでを要したとしても不合理なこととはいえないとして、原告の請求額を認めました。

2 休車損害

被害車両が営業車である場合、これを修理したり買い替えをしたりする期間、当該車両を使えなかったことにより得られなかった利益を『休車損害』といいます。

休車損害は、被害車両の1日当たりの売上額から必要経費(稼働しないことによって支出を免れたガソリン代など)を控除して1日当たりの収益額を算出し、これに休車期間(当該事故車両又は代替車両を使用することができなかった期間)を乗じることにより算定します。

1日当たりの売上額や必要経費については、事故前3か月における被害車両の売上高や変動経費の平均から算定します。

休車損害を請求するためには、代替車両(遊休車両)を保有していなかったことが必要となります。

例えば、タクシーの場合、無線配車分の売上は、他の空車に配車されることで相当割合がカバーされると判断されることがあります。

なお、代車費用と重複して休車損害を請求することはできません。

3 評価損

被害車両が破損した場合に、修理歴や事故歴により被害車両の価値自体が下落することがあり、この下落分を『評価損』といいます。

評価損は、車種、事故減価査定額、損傷の部位及び状態、初度登録からの期間、走行距離、修理の程度及び修理費などに基づき算定します。

示談交渉で加害者側が評価損を認める例は多くありません。

裁判では、個別判断となりますが、損傷が車体の骨格部分に及んでいる場合は認められやすく、修理費の3割程度の範囲内で認定される傾向にあります。

また、外車や国産人気車種では、初度登録から5年程度、走行距離で6万㎞程度、国産車では初度登録から3年程度、走行距離で4万㎞程度を経過すると認められにくい傾向があります。

なお、被害車両が、所有権留保車両やリース車両などの場合で、所有者以外の者から請求する場合には、債権譲渡を受けるなどしない限り困難です。

4 買替諸費用

『買替諸費用』とは、被害車両が全損となり、新たに車両を購入することを余儀なくされた場合に、車両購入費用以外に支出を余儀なくされる諸費用をいいます。

具体的には、自動車取得税、自動車重量税(使用済自動車の再資源化等に関する法律により適正に解体され、永久抹消登録されて還付された分を除きます)、検査・登録法定費用、車庫証明法定費用などがあります。

これに対し、自動車税や自賠責保険料は、未経過分についての還付制度があることから、損害と認められません。

また、実際に買替や修理をしていない場合の消費税相当額については、裁判例は肯定例と否定例が混在しています。

なお、買替諸費用は、実際に買替をした場合のみ認められ、仮に買替をすればこのくらいかかるはずというだけでは認められません。

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