2022年8月31日

自分の給料は時給に換算するといくら?
1時間あたりの賃金単価の計算方法

弁護士 守重 典子

はじめに

先日、中央最低賃金審議会が示した、令和4年度地域別最低賃金額改定の目安をもとに、各地域における2022年度の最低賃金の改定値が公表されました。
改定額の全国加重平均は961円と、昨年度から31円の大幅な上昇となり、メディアでも多く取り上げられていました。
埼玉県でも、2022年度の最低賃金を時給31円引き上げた987円へ改定され、本年101日から適用されることとなりました。

ところで、本ブログをご覧の皆様は、ご自身の給料を時給に換算した金額がいくらになるか把握していますか?
今回は、月給制の場合を念頭に、1時間あたりの賃金単価の計算方法をご紹介したいと思います。
お手元に給与明細とカレンダーをご準備いただき、ぜひ計算してみてください。

STEP1 基礎賃金の算出

 まず、基礎賃金がいくらになるかを計算します。
 基礎賃金とは、基本給のほか、業務手当、職務手当、役職手当等を含めた金額です。
 一方、以下のような賃金は基礎賃金に含まれません。
 ・家族手当  ・通勤手当  ・住宅手当  
 ・傷病手当、結婚手当等臨時に支払われた賃金
 ・賞与等一ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

 なお、「住宅手当」「通勤手当」の名目で支給されていても、実際の住宅に要する費用や通勤に要する費用に関わらず、一律に定額で支給される手当は基礎賃金から除外されません。

STEP2 年間所定労働日数の算出

 次に、年間の所定労働日数(労働契約で定められた年間の労働日数)を算出します。

 【年間所定労働日数=365日-年間所定休日】

 上記の計算にあたり、閏年の場合は366日となるので注意しましょう。

STEP3 年間所定労働時間数の算出

 Step2で年間所定労働日数が算出できたら、1日の所定労働時間(労働契約で定められた労働時間)を算出します。

 【年間所定労働時間数=年間所定労働日数×1日の所定労働時間】

STEP4 月平均所定労働時間数の算出

 STEP3で年間所定労働時間数を12か月で割り、月平均所定労働時間を算出します。

 【月平均所定労働時間数=年間所定労働時間数÷12】

STEP5 1時間当たりの賃金単価

 STEP4で月平均所定労働時間数が算出されたら、STEP1で算出した基礎賃金を、月平均所定労働時間数で割ると、1時間あたりの賃金単価が算出されます。

具体例

それでは、具体例に基づいて、1時間あたりの賃金単価を計算してみましょう。

【具体例】
 ・基本給23万円、役職手当3万円、住居費3万円、通勤手当5500
(住居費と通勤手当は実費相当額) 

 ・1日の所定労働時間:8時間(午前9時~午後6時)

 ・所定休日:土日祝日、年末年始休暇1228日~14日、夏季休暇5日間

 

まず、基礎賃金は、基本給に役職手当を加えた26万円となります。実費相当額が支給される住居費・通勤手当は基礎賃金から除外します。

具体例の条件によると、2022年の1年間の所定労働日数は235日となり、年間所定労働時間は235日×8時間=1880時間となります。

これを12で割った156時間が1か月の所定労働時間となり、1時間当たりの賃金単価は、26万円÷156時間=1666と算出されます。

補足①(労働者の方向け)残業代の計算

上記の要領で1時間当たりの賃金単価を算出できれば、残業代の計算をすることもできます。

すなわち、1時間あたりの賃金単価に以下の割増率をかけた金額が時間外労働の金額となります。

・法定外残業(1日8時間、1週40時間を超える労働)の場合 25%
・法定休日労働 35%
・深夜労働(午後10時~午前5時の間の労働) 25%

上記の例で、例えば午後8時まで残業をした場合の残業代を計算してみます。
通常の1時間あたりの賃金単価1666円に25%を加えた2082円が1時間残業をした場合の残業代として算出されますので、午後8時までの2時間残業をした場合は、2082円×2時間=4164円が残業代として算出されます。

補足②(事業者の方向け) 固定残業代制度

固定残業代制とは、実際に従業員が残業した時間にかかわらず、あらかじめ一定の残業代を給与に含めて支給する制度です。

残業代計算が簡便になるというメリットから導入している事業者の方もいらっしゃるかと思いますが、事業者側が設定した時間を超えた残業がおこなわれた場合には、その分の残業代の支払義務が生じますので注意しましょう。

また、通常の労働時間に相当する部分と、時間外労働に相当する部分とを判別することができない場合には、固定残業代の支払をもって残業代の支払がされたとみることはできないと判断した裁判例もあります。
そのため、固定残業代を導入している場合は、雇用契約書、労働通知書、給与明細等の記載に十分な注意が必要です。

さいごに

ご自身の給料が時給に換算するといくらなのかを把握できれば、上記のとおり残業代をご自身で計算することも可能となります。
ぜひ一度計算してみてください。

 

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