2022年3月31日

財産分与の対象とならない『特有財産』とは?

弁護士 沼 尻 隆 一

はじめに

離婚の調停や裁判の際に,子どもの「親権」や「養育費」,あるいは,「慰謝料の請求」などとともに,実務上,よく問題となる事項の一つとして,「財産分与」という問題があります。

これは,分かりやすく言えば,夫婦が婚姻中に夫婦で形成した財産については,名義のいかんを問わず,離婚の際に,原則として2分の1ずつ公平に分配・清算しましょう,という制度になります。

この点,財産分与の対象となるのは,前述したように,「夫婦が婚姻中に夫婦で形成した財産」ですから,たとえ夫婦どちらかの名義であっても,婚姻中に夫婦で形成した財産でなく,したがって,財産分与の対象とならない財産というのも,存在する可能性があります。

そこで,これらの財産を総称して,実務では,財産分与の対象となる夫婦財産と区別して,「特有財産」と呼んでおります。

では,これから,この財産分与から除外される財産である「特有財産」について,詳しくお話ししていきたいと思います。

特有財産とは

詳しく言えば,特有財産とは,夫婦の一方が,名義上も実質的にも,単独で有する財産のことをいいます。
夫婦が共同して形成した財産でないため,財産分与の対象とならないのが原則であります。

特有財産の種類

実務上,この「特有財産」については,その特徴に対応して,だいたい,次の3種類のものに分類されるようです。
① 夫婦の一方が「婚姻前から」持っていた財産
② 夫婦の一方が「婚姻後」,「相続によって」,あるいは,「親族からの贈与」などによって,得た財産
③ 夫婦の合意によって,敢えて特有財産とされているもの(例えば,それぞれの私服や専用の私物など)

夫婦財産性が争われる場合

ところで,特定の財産が,夫婦どちらかの名義であっても,財産分与の対象となる財産か,それとも,前述したような分類によって,財産分与の対象とならない特有財産なのか,その点が争いとなることがあります。

このような場合,裁判などでは,通常,夫婦の名義であれば原則,夫婦財産と推定され,財産分与の対象とされてしまうので,財産分与の対象から外したいのであれば,当該財産が夫婦財産でない特有財産だと考える方が,特有財産であることを立証しなければなりません。

実務上の具体的事例紹介

次に,特有財産かどうかが争われる実務上の例について,具体的な事例にもとづき,お話ししていきたいと思います。

特有財産でも部分的に分与対象となる場合(例えば,夫婦のどちらかが結婚前から持っていたマンションが夫婦の自宅となり,結婚後,そのローンを夫婦で払ったりしていた場合)

上記のように,もともとは,夫婦の一方の特有財産であった財産でも,結婚後,夫婦の共同により維持,発展がなされてきた財産については,その協力,貢献の度合いに応じて,財産分与の対象となり得るものとされています。

裁判例では,「・・・自宅建物のうち当事者の同居期間中の住宅ローンの返済分に相当する部分は,夫婦の実質的共有財産に当たる」などと判断された事例(東京高裁平成29年7月20日決定)もあります。

ほかにも,夫婦の片方が結婚前から持っていた賃貸マンションでも,結婚後,夫婦で共同して,入居者の募集をしたり,修繕をしたり,入居者からの苦情に対応したりするなどといった管理行為を続けた場合に,相応の財産分与が認められた例もあるようです。

特有財産性が維持される場合

① 特有財産が形を変じた財産
たとえば,特有財産の代償財産と認められる場合(例えば,特有財産が火災で焼失した場合に受け取った火災保険金など),婚姻前から持っていた預貯金などを取り崩して,新たに得た財産,あるいは,特有財産を売却した代金で購入した財産は,特有財産が形を変えたものにすぎませんので,特有財産として扱われることになります。

② 特有財産の利息や,収益など
特有財産が預貯金などである場合,その「利息」や「配当金」などは,原則として,特有財産となります。

では,特有財産が不動産である場合,その賃貸による収益は,特有財産となるでしょうか。

この場合,夫婦として共同して,当該不動産の賃貸業を営んでいると評価できるような場合はもちろんですが,そこまでいかなくとも,その賃貸収益に関して,特有財産の名義人である夫婦の一方ばかりでなく,他方の寄与,貢献がみられる場合は,財産分与の対象となり得るとされています。(その上で,名義人でない夫婦の一方の寄与,貢献の度合いに応じて,分与の割合が考慮されることになるようです。)

特有財産と夫婦財産が混在する場合の処理

① 婚姻前から有する口座の残高が婚姻後に変動した場合
婚姻前から有していた口座の残高が,婚姻中に生じた財産の混入によって,変動している場合がみられます。

この場合,実務上の処理の仕方としては,まず,残高の変動の仕方が比較的単調である場合は,婚姻時点での残高と,離婚時点での残高との差額(婚姻後,残高がほぼ単調に増加している場合),あるいは,婚姻期間中の最低残高と離婚時点での残高との差額(単調増加ではない場合)を夫婦財産として考慮するやり方などが,良く取られます。

そうでない場合は,婚姻後に混入した財産を一つ一つ特定して積算していった額を夫婦財産とするか(かなり複雑な処理を強いられます。),あるいは,当該口座の残高の増加に対する夫婦の他方の寄与・貢献の度合いを,割合的に考慮して分与額を決定するか,いずれかの方法によると思われます。


② 不動産の購入費用や住宅ローンの支払の負担者の問題
たとえば,不動産の購入費用の一部が特有財産であり,さらに,住宅ローンの支払についても,ある期間中は,同居中の夫婦が共同して負担し,その後,夫婦の別居中はいずれか一方が負担してきたような場合は,どうやって財産分与の額が決まるのでしょうか。

実務や裁判例などをみると,不動産の購入費用の一部が特有財産であった場合,その分は財産分与の対象から除外されるとしても,住宅ローンの支払の負担者については,同居期間と別居期間の期間の長さや,その際の負担者の実質的な負担金額の度合いなどに応じて,事案に即して実質的妥当かつ公平な処理がなされるよう,配慮されているようです。

いずれにしても,夫婦それぞれの寄与や貢献,負担の割合に応じて,財産分与の対象となる部分やその額が,決まってくるものと思われます。

(以上)

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