2021年3月31日

不貞慰謝料請求(同性事実婚の状態に法的な保護が与えられるか)

 弁護士 河原﨑友太

はじめに

同性同士の事実婚のカップルの一方パートナーの不貞行為を原因として事実婚状態が破綻した事案における慰謝料請求の可否が争われた裁判で,最高裁判所が,慰謝料請求権を認めた第2審の判決を維持する決定を行ったとの報道がありました。
少し解説します。 

不貞慰謝料請求事件における保護法益について

不貞行為に限らず,不法行為が成立するためには,法によって守られるべき利益(いわゆる「保護法益」)が侵害されたといえることが必要となります。

不貞慰謝料請求事件における保護法益については,最高裁が平成8年3月26日判決の中で,「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」と判示しています。

そのため,法律上の夫婦間において,一方配偶者が他方配偶者以外の第三者と不貞行為を行った結果として上記保護法益が侵害された場合には慰謝料請求権が発生すると解されています。

事実婚(内縁関係)の場合は?

日本の法律には,事実婚(内縁関係)という言葉はありませんが,裁判所は,古くから「男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては,婚姻生活と異なるものではなく,これを婚姻に準ずる関係というを妨げない」として,法的な保護の対象としてきました(最高裁昭和33年4月11日判決)。

そのため,事実婚の場合であっても,法律上の夫婦間の場合と同様に,一方配偶者が他方配偶者以外の第三者と不貞行為を行った結果として保護法益が侵害された場合には,慰謝料請求権が発生することになります。

ただ,ここで想定されていた事実婚は,男女間のものであり,同性間のものではありませんでした。

今回の一連の裁判は,同性同士のカップルに対しても,婚姻に準ずる法的な保護が与えられるか否かが争いになった事案です。 

第1審判決(宇都宮地裁真岡支部),控訴審判決(東京高裁)の判示

第1審判決

第1審を担当した宇都宮地裁真岡支部は,上記争点について,

「近時,価値観や生活形態が多様化し,婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況となっている。」とし,世界における同性婚の制度の存在や日本国内における自治体の動きに触れつつ,

「同性のカップルであっても,その実態に応じて,一定の法的保護を与える必要性は高いということができる。…そうすると,法律上同性婚を認めるか否かは別論,同性のカップルであっても,その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては,それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ,不法行為法上の保護を受け得ると解するのが相当である。」とし,法的保護に値する利益を肯定しています。

ただし,同性婚を(男女間の)内縁関係そのものと見ることはできないとして,両者の間に差異があるとしています。

控訴審判決

控訴審を担当した東京高裁も,

「そもそも同性同士のカップルにおいても,両者間の合意により,婚姻関係にある夫婦と同様の貞操義務等をおうこと自体は許容される」とし,第1審判決の判断を肯定しています。

最後に

異性間であろうと,同性同士であろうと,事実婚の状態と評価されるのであれば,法的な保護の対象とすべきであり,上記争点に対する今回の結論は妥当なものと思います。

やや気になるのは,慰謝料額の認定にあたって,

第1審が,「現在の法律上では認められていない同性婚の関係であることからすると,少なくとも現時点では,…法的保護に値する利益の程度は,法律婚や内縁関係において認められるのとはおのずから差異があるといわざるを得ず…」と認定した上で損害額を導いた点でしょうか。

控訴審は,差別的な取り扱いであるとする被控訴人からの主張に対し,上記の差異は,
「婚姻に準ずる程度とその保護の程度は,それぞれの関係の実態に基づいて判断することが相当である」と判示し,性別による差異ではないとしていますが,

第1審の(男女間の)内縁関係において認められるのとおのずから差異がある」という言い回しは,実態というより性別による差異でしかないようにも感じます。

この点,同時期に出された同性婚に対する札幌地裁の違憲判決等の動向も気になるところです。 

以上

 

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