2021年2月28日

特別寄与の制度~相続人以外の者の貢献が報われる?~

弁護士 柳沢里美

はじめに

2018年に相続法が改正された際,相続人以外の親族の貢献を考慮する方策として,特別寄与の制度が新設されました。

この制度はすでに2019年7月から施行されています。

今回はこの特別寄与の制度について説明します。

特別寄与の制度とは

特別寄与の制度とは,相続人以外の親族が無償で療養看護などの労務の提供をして被相続人の財産の維持増加に貢献した場合,相続人に対して金銭の支払を請求できるという制度です。

この制度が新設される以前は,被相続人の療養看護などの貢献をした者が相続財産から分配を受ける寄与分は,相続人にだけ認められていて,相続人以外の親族には相続財産から分配を受ける権利がありませんでした。

例えば,夫の親の介護を妻が行うというケースがよくあります。

妻が夫に先立たれた後も,夫の親の介護を夫の兄弟姉妹に代わって長年にわたり引き受けてきたとします。

妻は,夫の親が亡くなっても,その相続人ではないので,夫の親が妻にも財産を与えるという遺言を作成しておかなければ,相続財産から分配を受けることができません。

相続人が他にいなければ,特別縁故者制度により,相続財産を取得できる可能性もありますが,相続人である夫の兄弟姉妹がいる場合は,この制度も使えません。

妻は,夫の親に多大な貢献をしてきたにもかかわらず,相続でその実績を考慮してもらうことができませんでした。

この不公平を是正し,相続人以外の親族の貢献に報いるため,特別寄与の制度が新設されました。

特別寄与料が認められる要件

・請求できる人

特別寄与料を請求できるのは,相続人以外の被相続人の親族(六親等以内の血族,配偶者,三親等以内の姻族)です。

事例で挙げた夫の親の介護をした妻はこれにあたります。

・特別の寄与

無償で療養看護その他労務の提供により被相続人の財産の維持増加に特別の寄与をしたことが必要です。

妻が対価を受けずに夫の親の介護をしたことで,介護の費用がかからず,夫の親の財産を減らさずに済んだ場合などです。

特別寄与料の請求方法

・誰(どこ)に対して請求するのか

特別寄与料は,相続人に対して請求します。

まずは相続人との間で協議をします。

協議が整わなかったり,協議をすることができなかったりした場合は,家庭裁判所に対して,協議に代わる処分を申し立てることとなります。

その場合は,相続が開始した地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

・いつまで請求できるのか

特別寄与料は,特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月,又は相続開始の時から1年を経過すると請求することができません。

特別寄与料の金額

特別寄与料の金額は,一概にいくらということは言えません。

まずは当事者間の協議で決められますが,協議が整わない場合は,家庭裁判所が,寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して,特別寄与料の金額を決めます。

事例に挙げた妻が夫の親の介護をした療養看護の場合,第三者が同様の療養看護を行った場合の日当額に療養日数を乗じて,一定の割合で調整して特別寄与料の金額を計算する方法などがあります。

また,特別寄与料の合計額は,被相続人が相続開始時に有していた財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません。

相続人が複数いる場合は,各相続人は,特別寄与料の合計額に法定相続分又は指定相続分を乗じた金額をそれぞれ負担することとなります。

おわりに

特別寄与の制度は,施行日である201971日以降に開始した相続について適用があります。

特別寄与の制度は,相続人に対して認められる寄与分の制度と類似する点が多く,特別寄与料が認められるか,いくらくらいになるかなどの判断は,寄与分の解釈が参考になると思われます。

特別寄与料は請求をすれば必ず認められるわけではなく,争いになった場合に特別寄与料が認められるためには,生前の被相続人に対する貢献を裏付ける証拠が必要となります。

療養看護の場合は,被相続人の健康状態が分かる資料や介護記録などの療養看護の実績を客観的に裏付ける証拠を残しておくことが必要です。

特別寄与料の請求をする場合は,ぜひ弁護士にご相談下さい。

 

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