2020年7月31日

「強制執行をとめるには」 

弁護士 沼 尻 隆 一

はじめに

「離婚した妻子に,養育費を支払っていなかったら,突然,給料の差押を受けた」,
「住宅ローンの返済ができず,自宅を競売にかけられた」 ・・・etc.

自分の財産(不動産や給料債権など)が差押えられたりして,強制執行の対象となってしまったとき,どうすればいいでしょうか。

身におぼえのある場合も,そうでない場合もあるでしょうし,ケースはいろいろです。
そこで,今回は,場合を分けて,「強制執行をとめる方法」について,いろいろと,述べていきたいと思います。

なお,「強制執行をとめる方法」といっても,どんな場合にでも必ず強制執行をとめられるようなミラクルな法的方法が存在するといいたいわけではありませんので,その点はご理解の上,お読みください。

身におぼえのない場合

何らかの手違いや人違いなどで,あなたには身におぼえのない強制執行がなされた場合,
あるいは,身におぼえがある債務であっても,強制執行を受けるはずがないような場合,
強制執行の原因となる債権自体が存在しない,無効である,などといった「異議事由」を申し立てて,
「請求異議の訴え」あるいは,「第三者異議の訴え」という訴えを提起することにより,
強制執行の取り消しを裁判所に求めることができます。

「第三者異議の訴え」というのは,分かりやすくいえば,強制執行の対象となる財産は,もはや債務者の所有物ではない(所有権が移転した)などといった理由から,第三者が自分の所有物に対して誤った強制執行がなされていることの是正を求める訴えです。

ただし,どちらの訴えも,単に訴えを提起しただけでは,強制執行はとめられません(強制執行の手続自体は,そのまま進んでしまいます)。

ではどうすれば良いかというと,
請求異議訴訟,第三者異議訴訟の提起と同時に「強制執行の停止」の申立を行い,
強制執行停止決定の発令を裁判所に申立てますと,通常は,裁判所は「仮差押え」や「仮処分」の申立のときと同じように,「担保(保証金)」を法務局に供託することを条件に,「請求異議」「第三者異議」の訴訟手続が終結するまでの間一時的に強制執行の停止を命じてくれることとなります。
通常は,そこまでしないと,強制執行はとまりませんので注意が必要です。

なお,請求異議訴訟等の結果,債務者側が勝訴すれば,判決で,強制執行を取り消す(強制執行を許さない)旨を宣言してくれますので,それを強制執行をしている裁判所に提出すれば,強制執行は取り消されます。

一方,請求異議訴訟等で敗訴しますと,一時的な「執行停止」決定の効果もなくなり,強制執行は再び手続きが進められることになってしまいます。

身におぼえがある場合

① 預金口座の差押えを受けたとき

もしあなたが,年金生活者で,年金以外に目ぼしい収入がなく,その唯一の収入である年金が振り込まれる口座が差押えられた場合は,差押命令を発令した裁判所に連絡した上で
「差押(禁止)範囲の変更(差押範囲の減縮)」の申立
などを行いましょう。

年金受給権そのものは,生活保護受給権などと同じく,差押禁止債権ですので,その年金収入などが入ってくる唯一の口座が差押えられることは,実質的には差押禁止債権の定めを潜脱することにもなりかねません。
したがって,裁判所も,そのことが判明した場合は,強制執行をそのままの形で続行しないことも多いようです。

したがって,身におぼえがあっても,差押禁止債権や実質的にそれと同視できる債権を差し押さえられた場合は,事情を説明して,強制執行の命令を発令した裁判所に是正を求めて下さい(裁判所もそういったケースでは割合親身に相談に乗ってくれたりします。)

② 不動産の競売を申し立てられた場合

不動産が競売にかけられた場合でも,売却決定がなされ売却先から代金が納付されるまでは強制執行をとめることができる可能性があります。
この場合,身におぼえがある債権で競売に付された場合に,その手続をとめるためには,事後的に請求権を消滅させる法的措置,具体的には,「弁済」をすることが先決になります。
この点,

 まず,弁済といっても,単に債務の元本だけを払っただけでは駄目で,元本に加え,弁済時までの「利息」と,「遅延損害金」,それに加えて,民事訴訟や強制執行の手続にかかった「費用」も上乗せした金額を,支払わなければなりません。
これを「債務の本旨に従った弁済」,「本旨弁済」などと呼ぶことがあります。

 そして,この「本旨弁済」をするためには,通常は,金銭債務ですから,「義務履行地」つまり,相手方債権者の住所(法人なら本店所在地)まで自ら行って,弁済金を提供しなければならないのが原則です。

 さらに,履行の際は,現金か,金融機関の自己宛小切手(預金小切手)を持参していかなければなりません。通常の「手形」や「小切手」では駄目です。
このような弁済の仕方を,「現実の提供」と呼ぶことがあります。

 「本旨弁済」をし,債務を消滅させるためには,原則として,「現実の提供」を行うことが必要となります。ただし,相手方(債権者)が,「予め明確に受領を拒絶」しているときには,「現実の提供」を行わなくても,弁済の提供をしたと認められる場合があります。

 それでは,きちんと「現実の提供」をしたにもかかわらず,相手方である債権者が,弁済金の受領を拒絶した場合は,どうしたら良いでしょうか。

その場合は,ひとまず,法務局に行って,「弁済供託」の手続をすべきです。
弁済供託の手続が適切になされた場合,弁済を現実に提供したのと同等の効果が認められることになります。
(相手方債権者が予め明確に受領を拒絶している場合で,現実の提供が困難な場合の措置については,細かくなりすぎますので,本稿では割愛します。)

 債務の本旨に従った弁済を現実に提供して相手方債権者に受領された場合,または,現実に提供したが相手方が受領拒否したため,「弁済供託」の手続を行った場合には,強制執行の原因となる債権が弁済等によって「事後的に消滅」したことを「異議事由」として,先に述べた,「請求異議」の訴えを申し立てます。

「請求異議の訴え」は,こういった場合にも,申立てることができるのです。
その際に,異議訴訟の提起だけでは強制執行の手続は停止しないので,あわせて,「強制執行停止」の申立を行う必要があることは,前述したのと同様です。

 なお,債務の本旨に従った弁済を現実に提供して相手方債権者に受領された場合には,同人から「領収証」の交付を求めます。
この「領収証」を裁判所に提出すれば,それ自体が「執行停止文書」となるので,4週間に限り,強制執行の手続は一時停止します。 

 

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