2016年12月26日

刑事事件の当事者は対等ではない

弁護士 岡田宜智

 

つい先日,私に配転されたある被疑者国選弁護事件についての話です。
接見に行き,事情を色々と聞いたところ,これはすぐに準抗告をした方がいい事案だと思い,翌日には準抗告申立書を裁判所の刑事訟廷に持参しました。

 

刑事訟廷の書記官による書面の形式的なチェックが終わって,事務所へ戻る道中,裁判所から私の携帯に着信が。
なんだろうと思って電話に出ると,先ほど申立てがあった準抗告は受付できませんとの連絡でした。
え!?なんで!?と思い,ダッシュで裁判所まで戻って話を聞いてみると,今回の私の準抗告は再抗告禁止(刑事訴訟法432条,427条)にあたってしまうという話でした。
つまり,今回の事件は,検察官の当初の勾留請求に対して裁判官が勾留請求却下の決定を出していたところ,その却下決定に対して検察官から準抗告があり,それが認められた結果,勾留に至ったという経緯を経た事案だったのです。

 

なるほど,法律上,私の準抗告の申立ては確かに再抗告にあたってしまうのでしょう。
しかし,私のところに事件の配点が回ってきた段階では,そのようなことは一切知らされておりません。

 

書記官の話では,準抗告を経てなされた勾留決定かどうかは,裁判長の名前で勾留状が出ていることから判断してほしいということでした。

具体的には,通常の勾留状には,裁判官名の記載欄に「裁判官 〇〇」とだけ書いてあるのですが,「裁判長裁判官 〇〇」となっている場合には,検察官準抗告後の勾留決定だということのようです。

 

一つ勉強になりました。
勉強にはなりましたが,弁護人に対する情報提供のあり方としては不十分なのではないかという思いが非常に強いです。

 

最近日弁連でも法務大臣等に対し,「刑事手続における書面の交付義務等に関する意見書」(平成28年11月15日付)を出しています。
この意見書の中では「検察官から準抗告が申し立てられているということ自体さえ弁護人にはほぼ知らされていないのが実情である」,「現状のごとき当事者不対等な状態は即刻改善すべきである」,「準抗告等の手続において当事者が提出する書面・資料の謄本・写しの相手方への交付を義務化」すべきであるという言及がなされています。

 

まったくそのとおりで,是非これは実現してもらいたい話です。

 

なお,いったん勾留請求が却下されたならその時点で釈放すべきですし,検察官が準抗告するまでの間の身体拘束の法的根拠はあるのでしょうか。
気になったので調べてみたのですが,この点は非常に争いのあるところのようです。
ものの本によれば,釈放しないことは「明らかに不当拘禁というべきではなかろうか」,「捜査の便宜に流れたこれまでの実務慣行は,きびしい反省を必要とするものといわなければならない」(実例法学全集 刑事訴訟法(新版),平野龍一・松尾浩也編,青林書院)とあります。

 

刑事手続における現状の制度は,まだまだ改善すべきところが多いようですね。

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