2017年1月5日

最新判例紹介(預貯金等債権が遺産分割審判の対象となることを認めた判例)

弁護士 沼尻隆一

 

皆さま明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。さて,今回紹介致しますのは,新聞でも報道されましたので,皆さまご存じかと思われますが,昨年の年末(12月19日)に最高裁判所で出された,「遺産分割審判の対象に預貯金が含まれる」とした判決です。

 

実はこれまで,平成16年(2004)年に出された過去の最高裁判例にもとづき,銀行預金などの債権については,原則として遺産分割審判の対象とならないような取扱いが為されてきました。したがって,例えば,預貯金だけしか遺産がない場合は相続人全員の同意がない限り遺産分割審判の手続が利用できないなどの不都合が出現していました。
今回の最高裁判例の事案も,遺産の価値の大部分を預貯金がしめ,おまけに,相続人の一人に多額の生前贈与がなされているといった事案であり,預貯金については遺産分割の対象としないとすると,かえって不都合が生じかねない事案でした。

今回の最高裁判例は,このような事案で,預貯金債権について通常の可分債権と同じように相続開始と同時に当然に分割され遺産分割の対象としないという従来の取扱いを改め,こんにち,預貯金債権は現金に近い財産であることなどを理由として,不動産その他の通常の財産と同じく,相続人全員の(一種の)共有状態にあるものとして,遺産分割審判の対象として取り扱うことを認めました。

 

裁判官15人の全員一致の結論であったことからも明らかであるように,結論の妥当性自体は,あまり異論の出ないところと思われますが,その理由付けの部分に関して言えば,今回の最高裁判例の多数意見は,通常の預貯金債権及び定期貯金(旧定期郵便貯金)については「可分債権」としてではなく相続人全員の「準共有」状態にある債権として取り扱うこととしましたが,他の債権一般についてもそのように取り扱うのかについては何も判断していません。
これに対し,相続開始時点で存在した債権は可分債権であろうとなかろうと原則として全て相続財産(=遺産分割の対象)として考慮すべきという(少数)意見(大橋正春裁判官の意見)がありました。
法務省の法制審議会で行われている民法の改正に向けての議論の中でも,遺産分割と可分債権の取扱についてはいろいろと議論と検討がなされているようですが,私見では,法制審議会での試案(中間試案)の前提となっている考え方は,どちらかといえば上記の少数意見の考え方のほうに近いようにも思われます。

 

預貯金及び定期貯金債権以外の債権についてはどこまで判例の拘束力が及ぶのかといった判例の射程の問題,預貯金債権の利息など(法定果実)の取扱いはどうするのか,あるいは,亡くなった被相続人から扶養を受けていた人のために預貯金を払い出す必要がある場合にどうするのか,などといった点については,今後まだまだ議論の余地があるように思われます。

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