2017年3月9日

養育費と婚姻費用の算定基準(日弁連の新提言)について

弁護士 沼尻隆一

 

離婚に関連する夫婦関係の家事事件で,たいてい問題となるのが,ご夫婦が別居している間(通常は,離婚するまでの間)の生活費の問題であり,これを法律用語では,「婚姻費用(分担請求)」の問題といっています。

また,ご夫婦の間にお子さんがいる場合に,離婚が成立した後の,お子さんの「養育費」の支払いについても,同様に,事件の争点の一つとされることが,たいへんに多いです。

 

私も弁護士として,夫側,妻側双方の立場で代理人になることがありますが,どちらの立場からも,これらの「婚姻費用」,そして「養育費」の問題については,常に重大な関心の対象となるものです。

これらの点に関連して,昨年の年末(といっても11月のことですが),日本弁護士連合会(略して「日弁連」ともいいます。)が,「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」というものを公表しました。

 

これは,従来,家庭裁判所の実務では,裁判官や家庭裁判所の調査官によって組織された「東京・大阪養育費等研究会」という会が2003年に判例タイムズという雑誌に発表した「簡易迅速な養育費の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-」という提言と,その中で示された養育費・婚姻費用の「簡易算定方式」に依拠して作成された「簡易算定表」という表があり,これにのっとった運用が支配的に(という表現は語弊があるかも知れませんが)なされてきました。

 

これに対し,今回の日弁連の「提言」では,その原則的な算定方法は,上記の「簡易算定方式」に依拠しつつも,たとえば,住居関係費や職業費の一部を総収入から控除される経費には含めないなどして,給与所得者の基礎収入を総収入の約6~7割と算定し(従来方式では約4割程度に算定されていた),あるいは,子どもの年齢区分を従来方式よりもより細かく区分するなど,最近の社会の実情に即した(2003年以降の税制及び保険料率の改正等を反映させるなどした)形で,部分的に修正を加えたものとされています。

 

もっとも,現時点では,日弁連から上記提言が公表されたというにすぎず,家庭裁判所の実務における影響や評価は,未だ未知数の段階である,というのが実際の状況のようです。

 

つい最近も,たまたま担当している事件で家庭裁判所に出向いた際に,家庭裁判所の調停委員の方々にこの提言のことを聞いてみましたが,当該調停委員の方々は,上記提言のことをほとんど,ご存じではないようでした。

弁護士としても,この提言の,家裁実務への影響なり評価の具体化が,これからどういう形で現れてくるのか,注視していきたいと思います。

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