2018年5月16日

日本版司法取引

弁護士 岡田宜智

 

今年の6月1日から,いわゆる司法取引が日本でも導入されます。

日本の刑事訴訟法では「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意」(第2編第4章)とされており,正式には司法取引という語は使われてはいないのですが,報道等では日本版司法取引などと紹介されています。

 

司法取引という言葉から連想するのは,「罪を認めれば刑を軽くしてやる」と言われたので罪を認めた,といったケースではないでしょうか。

こういった取引は自己負罪型の司法取引と呼ばれ,アメリカなどで見られる司法取引のケースです。

 

6月1日から導入される日本版司法取引では,このような自己負罪型の司法取引は認められていません。

日本においては,他人の事件について訴追協力する(例えば,首謀者を有罪とするために必要な情報を,首謀者ではない他方の共犯者が捜査機関に提供する等)ことによって自分の罪を軽くしてもらう等といった,いわゆる協力型の司法取引しか認められていません。

 

そして,日本版司法取引では,司法取引可能な犯罪が特定されています。

組織的な犯罪等の事案解明のために導入されたという経緯から,司法取引が可能な犯罪は大別すると特定の財政経済犯罪と薬物銃器犯罪に限られています。

殺人や強姦(強制性交等)等の生命身体に関する罪に関して司法取引することはできません。

 

また,手続としては,検察官,協力する被疑者本人及び弁護人の三者で協議をした上で,協議が整ったら一定の合意をするという点が特徴です。

合意が成立すると,被疑者本人は捜査協力等が義務づけられ,検察官は協力した被疑者に対する処分の軽減等の措置をとることが義務づけられます。

 

弁護人としては,捜査協力する側の被疑者の弁護人となる場合も,標的とされた共犯者側の弁護人となる場合もあり,どちらの場合でも適切に対応できるようにしておく必要があります。

 

日本版司法取引が実際にどのような運用になるかについては,今弁護士会でも様々な検討がなされていますが,当初予定していなかった色々な問題点が出てくる可能性があるでしょう。

新しい制度だからよく分からないということのないように,今から私も制度理解を深めなければならないと思っています。

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