2018年5月23日

性犯罪規定の刑法改正

弁護士 柳沢里美

 

少し前まで,某有名アイドルが起こした強制わいせつ事件が,連日ニュースに取り上げられていました。

飲酒が絡んでいたことや被害者が未成年であったことなどから,加害者である某アイドルに対しては,厳しい批判の意見がありました。

結局,加害者はグループを脱退し,所属していた事務所との契約も解除されたそうです。

今回,加害者は逮捕されておらず,刑事処分としてもすでに不起訴となっています。

もし有名人などではない一般の人であれば,在宅事件のため仕事を休むこともなく,早期に不起訴処分となれば,日常生活にもそれほど大きな影響はでなかったかもしれません。

今回の事件で,加害者は,これまで築き上げた地位を失い,相当な社会的制裁を受けたと言えるのではないでしょうか。

 

ところで,今回の強制わいせつ罪を含む性犯罪は,昨年の刑法改正により変わりました。

おおまかな改正の内容は,次のとおりです。

 

①これまでの「強姦罪」が「強制性交等罪」に変わりました。

これまでの強姦罪では,被害者は女性に限定されていましたが,強制性交等罪では,男性も被害者となり得ます。

 

②強制性交等罪(これまでの強姦罪)の法定刑の下限が,3年から5年に引き上げられました。

強姦罪の法定刑については,以前から,強盗罪は5年以上の懲役なのに,これより軽かったため,均衡を失するとの意見が強くありました。

これを踏まえ,厳罰化が図られました。

 

③新たに「監護者わいせつ罪」「監護者性交等罪」ができました。

親や同居の親族などからのわいせつ行為や性交等については,暴行・脅迫がなくとも,強制わいせつ罪や強要性交等罪と同じように処罰できることになりました。

 

④強制性交等罪や強制わいせつ罪などの性犯罪が非親告罪となりました。

これまで強姦罪や強制わいせつ罪などの性犯罪については,被害者の告訴がなければ起訴することができない親告罪の規定がありましたが,これがなくなりました。

これによって,被害者の告訴がなくても,検察官が起訴をして裁判を行うことができるようになりました。

 

いずれも重要な改正ですが,私が一番気になるのは,非親告罪となった点です。

親告罪であったときは,加害者が被害者と示談するなどして告訴を取り下げてもらえば,起訴されることはありませんでした。

非親告罪となったことで,たとえ被害者が告訴を取り下げたとしても,起訴される可能性があるため,加害者にとっては不利益な改正であると言えます。

 

一方,被害者にとってはどうでしょうか。

性犯罪の被害者の苦痛は計り知れないため,その配慮は最大限になされなければなりません。

被害者の告訴の有無にかかわらず起訴できるため,告訴するかどうかについての被害者の精神的負担が軽減される可能性はあります。

そもそも,性犯罪の被害者は,被害にあっても警察などに相談すること自体,抵抗があると考えられるので,そのような場合でも,捜査が行われ,加害者に対してしかるべき処分がなされる可能性があります。

しかし,事件に一切関わりたくないと考える被害者もいるはずです。

それでも被害者は捜査への協力を要請され,もし起訴された場合は,裁判の中で証言しなければならないこともあります。

また,親告罪であったときは,被害者と示談をして告訴を取り下げてもらえば,起訴されないため,加害者が被害弁償を行う強い動機があったと考えられますが,非親告罪となったことで,この動機が薄れてしまった可能性があります。

このような側面があるため,非親告罪となったことが,必ずしも被害者にとって有利であるとは言い切れないと思います。

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