2025年6月30日

整理解雇

 弁護士 水口 匠

1 整理解雇とは

整理解雇とは、使用者側(経営者側)の経営上の都合により生じた人員削減の必要性から、労働者を解雇することをいいます。

例えば、会社が赤字続きで、倒産を回避する目的で人件費節減のために解雇する場合や、黒字の場合でも会社の経営戦略上ある部門を閉鎖して余剰人員を解雇する場合などです。

整理解雇も解雇の一種なので、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、使用者が解雇権を濫用したものとして無効になります(労働契約法16条)。

特に整理解雇は、労働者側に責任がないにもかかわらず、使用者側の事情によってなされる解雇であり、労働者はこれにより職を失うことになるため、その有効性は普通解雇の場合よりも厳格に判断されることになります。 

2 整理解雇の有効性

整理解雇が有効か、それとも解雇権の濫用となるかについて、裁判例では①人員削減の必要性があること、②解雇回避のための努力が尽くされていること、③合理的な人選基準、④手続の妥当性(説明義務を尽くしていること)の4要素が挙げられています。

ただし、裁判例においては、このすべての要素を検討しているものもあれば、そうでない場合もあり、必ずしも検討方法が固まっているというわけではありません。
また、それぞれの要素についても、事案によって重視するところが異なることもあります。 

①人員削減の必要性

多くの裁判例では、整理解雇による人員削減の実施が、経営的危機などの状況から経営上の十分な必要性に基づいているものか、又は会社の経営戦略上やむを得ない措置と認められるかを検討しています。

これらの必要性を検討するため、裁判では、会社の決算書類や帳簿類などから、売上げや経費などを確認することになります。

また、整理解雇をしているにもかかわらず、新たな人員を募集しているような場合には、人員削減の必要性が否定されやすくなるため、新たな人員の採用状況についても重要な判断材料となるでしょう。 

②解雇回避のための努力が尽くされていること

解雇回避のための努力が尽くされたかどうかについては、例えば、経費削減(役員報酬の削減や従業員の残業規制などを含みます)の努力をしたか、従業員に対して出向・配転や賃金削減の措置を検討したか、希望退職制度など、合意退職による人員削減を行う努力をしたかなどが検討されることになります。

この要素は、特に経営戦略上の必要性によって行われる整理解雇の場合には厳しく検討されることになるでしょう。
逆に、倒産の危機に瀕した場合の整理解雇である場合には、比較的緩やかに判断される傾向にあります。 

③合理的な人選基準

整理解雇の対象者の人選にあたっては、それが恣意的なものであってはならず、整理解雇を行うときに客観的かつ合理的な基準が定められている必要があり、また、その基準を適正に当てはめて運用していることが必要になります。

選定基準を定めるにあたっては、勤務成績や勤務態度、能力などのほか、勤続年数、雇用形態(正規社員か、非正規社員かなど)など様々な要素がありますが、いずれにしても、その整理解雇の目的を達成するために必要な指針に基づいて設定されていなければならず、この指針と選定基準がずれている場合には、合理性が認められません。

また、選定基準は選定当時に明確になっていなければならず、整理解雇後に後付けで設定されたような基準では、選定手続に合理性が認められません。

したがって、使用者側としては、説明可能な程度に客観的な基準をあらかじめ定めておく必要があります。 

④手続の適正(説明義務)

裁判例では、使用者は労働者(労働組合)に対して、整理解雇の必要性とその内容及び解雇に対する補償内容などについて納得を得るために説明を行い、誠意をもって協議すべき信義則上の義務を負うこととされています。

この説明義務については、抽象的に整理解雇の説明をしただけでは足りず、個別具体的に会社の状況や解雇される労働者の選定基準などを適切な資料に基づいて説明する必要があります。

なお、労働組合があり、労働協約において整理解雇の際には労働組合との協議を経なければならないといった条項がある場合に、説明や協議をしないで整理解雇がなされた場合には無効になります。 

このように、整理解雇は、必ずしも経営上の危機に瀕していることが必要というわけではありませんが、労働者の身分を喪失させる性質のものであるため、その実施にあたっては、十分な準備と透明性が必須になります。

特に基準の明確性と説明義務については、不十分になりやすくなる傾向があるため、あらかじめ弁護士など専門家と十分に協議を行ったうえで万全を期すことが求められるでしょう。

以上

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