民法(債権法)改正の要点(法定利率)

弁護士 沼尻隆一

 

平成29年5月26日,民法の一部(債権法分野)の改正法が成立し,同年6月2日に公布されました。

原則として公布の日から3年以内に施行がなされるため,現在,概ね2020年の施行を予定して準備が進められています。

改正後の民法404条によれば,法定利率は年5%から年3%に引き下げられ,なおかつ,3年ごとに市中金利に連動して変動することになりました。

法定利率というのは,分かりやすくいえば,当事者間で合意したのではなく,法律上当然に利息(遅延利息)がつく場合の,その利率のことです。

例えば,交通事故で受傷した場合の損害賠償請求権については,事故当日から遅延利息(遅延損害金)が発生することになっていますが,その場合の利率が法定利率であり,現行法で年5%の利率で,遅延利息(遅延損害金)が自働的につけられます。

 

預金等の市中金利と比較して,あまりに法定利率が高いという現状が,今回の改正の背景にはあるようです。

さて,この改正により,一見すると,債権を有する者(事故の被害者など)は,これまでの債権者よりも不利になってしまうような気もしますが,一概に全てがそうなるというわけでもないようです。

 

というのは,例えば,先ほどの交通事故で受傷した場合の損害賠償請求権のうち,「後遺障害」を原因とする,将来にわたる労働能力喪失分の逸失利益については,将来給付がなされる分を,現在の価値に引き直して計算(現価計算)して受け取ることになるため,そのための「中間利息の控除」という操作が必要となります。

これは,例えば10年後に給付を受ける100万円を,今ただちに受け取るとすれば,分かりやすくいえば,10年分の利息を控除する必要があるということです。(しかも逸失利益は毎年発生するので,毎年の給付分の中間利息をそれぞれ控除する作業が必要となります。)

この「中間利息の控除」の場合も,法定利率にもとづいて計算がなされるのですが,理屈でいえば,利率が低い方が,「現在受け取るべき」現価計算上の数字は,むしろ高額になるのです。