「子どもさんを夫婦の裁判官にしちゃいけません」

弁護士 守重典子

 

最近,読書熱が止まりません。

移動時間やちょっとした空き時間には,必ず本を読むようにしていて,はまると400頁前後の小説だったら3日あれば読了してしまうペースです。

 

直近で読了したのは,有川浩さんの『キャロリング』です。

物語の中の季節はクリスマス前なので,今年の異常とも言える猛暑のなかで読むと,少し季節感がずれてしまいましたが,どのキャラクターも個性豊かで,サクサク読めてしまう小説でした。

 

さて,その小説の中に「航平」という小学6年生の男の子が登場します。

航平君の両親は不仲の状態で別居中(航平君は母親と同居し,父親とは別居)。関係が良好化する兆しもなく,離婚秒読みの状態となっています。

ですが,お父さんもお母さんも大好きな航平君としては,何とか両親の離婚を阻止したく,仲直りに向けて奔走する姿が描かれています。

 

ある日,航平君がお母さんに内緒でお父さんに会っていることがばれてしまい,航平君はそのことで母親から責められます。

 

そんなときに,学童で航平君を預かっている職員の1人である英代さんというキャラクターが母親にこのように諭す場面が出てきます。

「子供さんを夫婦の裁判官にしちゃいけません」

「ご両親を愛している子供さんにどちらかを裁かせるのは残酷ですよ。夫婦は別れたら他人ですけど,航平くんにとっては一生お父さんなんですから」

 

 

 

この部分を読んでいて,弁護士としていろいろ考えることがありました。

日頃,離婚の調停あるいは裁判等で,お子様の親権が争いになる事案は少なくありません。

どちらが親権者となるのか,夫婦の間で話し合いがまとまれば,その内容で親権者を決めることができますが,話し合いがまとまらない場合には,父母の生活状況等をはじめとする事情を踏まえた上で,家庭裁判所が判断することもあります。

その際,お子様がある程度の年齢に達している場合には,お子様の意思も尊重されます。

ですが,本来お子様にとっては父親が父親であること,母親が母親であることに変わりはありません。小説の中で航平君が言っていたように「両方とも好きなのに,どちらかを選ぶことなんてできない」というのが正直な気持ちであるという事案も少なくないかもしれません。

 

「子どもの意思を尊重する」というのは,子どもを一人の人間として認め,その意見を尊重するという,子どもを想うことである一方,まだ一人前とは言えない子どもに,残酷な選択をさせることでもあるよね,とこの小説を読んで改めて感じました。

 

 

 

・・・と,今回は夏休みが終わる時期のコラムらしく,夏休みの伝統的宿題である読書感想文的なコラムでまとめてみました。