終活

弁護士 堀哲郎

 

2歳年下の妹から,突然,メールが来ました。

 

妹は,9年前に一人娘がアメリカ在住のアメリカ人男性に嫁ぎ,2年前には夫に先立たれ,以来,一人暮らしをしており,高齢者となった今,終活に余念がないとのことです。

その一環として,身辺のものを整理しており,その中で母から預かっている「私の物」を送るというのです。

 

母は,昨年からケアハウスに入所し,その際,それまで保管していた「私の物」を妹宅に預けたのでした。

母は,その昔,多重債務に陥り,その結果,実家を手放すことになったのですが,それでも「私の物」は処分することなく,後生大事に保管していたのでした。

 

先日,その「私の物」がダンボール箱1箱に詰められて送られてきました。

中身は,小・中・高・大学の卒業証書,通知表(成績表),各種賞状(絵画展,書道展等の入選,軟式テニスの大会での優勝等)の他,小学生の頃に描いた絵,作文などもあり,いずれも私の記憶からはすっかり消え失せていたものばかりでした。

その中に,小学3年のときの作文で,東海地方に大きな被害をもたらした伊勢湾台風について書いているのがあり,当時の恐怖体験の記憶がまざまざと蘇えってきました。

 

ところで,私もボチボチ身辺のものの整理を始めてはいるのですが,なかなか捨てられないのが実情です(妹と同じで,妻はどんどん捨てまくっています。)。

母が大事に保管していた「私の物」も,到底捨てられそうにありません。

この点,作家の五木寛之氏は,老後の生き方について,その著書「孤独のすすめ」(中公新書ラクレ)の中で,

後ろを振り返り,ひとり静に孤独を楽しみながら,思い出を咀嚼したほうがよほどいい。

などと述べていますが,おおいに共感できるところです。

 

なお,妹からのメールには,

 

思い出に浸って下さい

私は残しておかないほうなので何もありません(笑)

 

とありました。