無言でいることができた友

弁護士 堀 哲郎

 

今年も,もうすぐ7月7日がやってきます。

13年前のその日,我が良き友深田正人弁護士は46歳の若さでこの世を去りました。

この出来事は,私にとって人生最大の悲しみをもたらし,それは,10年前に父を亡くした今となっても変わりありません。

 

彼とは司法修習同期であり,刑事裁判修習で机を並べて以来,親交を深め,1990年に一緒に浦和法律事務所に入所しました。

入所2年目のある日,仕事で大阪に向う新幹線の車中で,彼が「仕事を忘れ,家庭を忘れ,のんびりとどこか遠くへ行きたいなぁ…」とつぶやいたのがきっかけで,年に1回程度,プライベートで一緒に旅行に出掛けるようになりました。

「あすなろ旅行」と称し,彼が亡くなった年の4月までに(この月の奈良旅行(明日香村)が最後となりました。),17回を数えました。

 

この旅行のルールとして,「旅行中は仕事の話をしない」というのがありました。

仕事を忘れるのが目的の一つでしたから,当然といえば当然ですが,日々紛争の中に身を置いている弁護士にとっては重要なことでした。

 

とにかく,何もかも忘れてボォーっとしていたい,というのが旅行の目的ですから,必然的に旅行中の会話は少なくなり,ときには長時間無言でいることもありました。

2人きりでいるときに,会話が途切れ,しばらく沈黙が続いたりすると,何か話さなければと焦ったり,あるいは若干気まずい雰囲気を感じたりすることがよくありますが,彼といるときは,旅行中に限らず,そのようなことは全くありませんでした。

 

終始無言で互いに何を想っているのかわからないけれど,ただ同じ時間と空間を共有しているという,安らいだ気分に浸ることができました。もちろん,仕事も家庭も忘れてです。

 

このような,かけがえのない友を失った喪失感は如何ともし難く,私の中では,2005年7月の時点で時間が止まったままとなっています。