青森地裁弘前支部・その1

弁護士 堀 哲郎

 

青森地方裁判所弘前支部へは,刑事事件で1度,民事事件で1度訪れたことがあります。

 

1度目は,弁護士となって2年目の1991年の夏の盛りで,浦和地裁(現さいたま地裁)に係属していた強盗強姦被告事件の出張尋問のため,青森地裁弘前支部を訪れました。

このときのことは,「みちのく一人旅」と題して,当時の事務所ニュースに掲載しましたが,以下に全文をそのまま引用します(出たぁ~,掟破り!)。

 

夏の盛り,仕事で青森県は弘前市に行くはめになった。

発端は強盗強姦被告事件の国選弁護人に選任されたこと。

事実関係に争いなく,情状のみが問題の事件であるが,被害者との示談もままならず,特に訴えるべき有利な情状も見出せず,確たる弁論方針もたたないまま公判期日を迎えてしまった。

とにかく,もう1回期日を入れてもらわねばどうにもならないので,「情状証人が弘前に住んでいるが,病気がちでこちらまで出て来れない。」と口走ってしまった(これはウソではない)。即座に,「では,出張しましょう。」と裁判長。

一瞬,目が点になる(えっ,本当かよ,このクソ忙しいのに…)。「弁護人,いかが。」とさらに裁判長,「そうしていただければ有難いです。」とやけぎみの私。

こうして遥か弘前への出張が決まった。

出張尋問の期日は8月6日午前10時,前日から泊まりで行くしかない。

ところが,その頃はねぷた祭りの真最中ということで宿が全くとれず,さる筋に頼んでようやく見つけてもらった。

「弘前では無理,大鰐温泉でやっと一軒見つかりました。」(おっ、温泉か、いいぞ。)

「名前は『民宿・亀の湯』です。」(カ、メ、ノ、ユ? 銭湯じゃないか?)

8月5日,「亀の湯」というのはシャレで立派な温泉宿に違いないと淡い期待を抱いて弘前に向かった。

新幹線,特急を乗り継ぎ,約7時間かけてようやく目指す宿に着き,唖然,名前そのままの宿であった。

もっとも,その夜は大鰐温泉でねぷた祭が盛大に行われ,その迫力,すばらしさに圧倒された。

翌日の尋問期日,時間になっても証人が現れず,我々(裁判官,書記官,検察官,弁護人)はあせった。

検察官曰く「もし来なかったら,我々は何しに来たんでしょうね。」

―ねぷた祭を見に来たに決まってるじゃないか!

 

当時,東北新幹線は盛岡が終着駅でした。

そのため,その先の青森,さらには弘前となると最果ての地というイメージでした。

実際上,以下のとおり,宿泊地の大鰐温泉まで約7時間かかったわけです。

8:10上野発 やまびこ322号

11:30盛岡着

11:53盛岡発 特急はつかり85号

14:14青森着

14:26青森発 特急田沢24号

15:06大鰐温泉着

 

ところで,出張尋問の場所は,なにも裁判所に限ったことではありません。

ある傷害被告事件では,共犯者である少年の証人尋問のため,その少年が入院している少年院に出向き,パイプ椅子と折りたたみテーブルで臨時の法廷を現出し,証人尋問を実施したこともあります。

また,民事事件では,医師の尋問で勤務先の病院に,介護施設入所者の尋問で当該介護施設に出張したこともありました。

 

さて,2度目の青森地裁弘前支部訪問については,次回「青森地裁弘前支部・その2」に譲ることにします。