あのときの時給は高い?高くない?

弁護士 水口 匠

 

高校生の頃,夏休みの間に,地元の製菓工場でアルバイトをしました。

私が人生で初めてお金を稼いだのがこのときで,新しく作った預金口座に給料が入ってきた時の感動は,今でも覚えています。

その時の時給は910円。

当時の高校生のアルバイトの時給は,700円台が普通で,安いところでは600円台のところさえありました。

ですから,当時としては私の時給は破格で,周りから羨ましがられたものでした。

 

あれから20年ほどが経ちました。

コンビニエンスストアやファミリーレストランなどに貼ってあるアルバイトの募集広告を見ると,900円台の時給が普通であり,安いところでも800円台後半,700円台は皆無です。

20年前と今とで,そこまで物価に変動があるとは思えないのに,なぜでしょうか。

 

日本では,最低賃金法という法律により,各都道府県ごとに最低賃金が定められています。

最低賃金とは,労働者の生活の安定などを目的として,最低限,労働者に保障されなければならない賃金額であり,この金額に達しない賃金を定めた場合には,その部分は無効になり,最低賃金と同額を定めたものとみなされるほか,これに違反した事業者には罰則が定められています。

また,労働者は,その職場が最低賃金以下の賃金を定めているような場合には,労働基準監督署などに是正のための適切な措置をを取るように求めることもできます。

そして,この最低賃金法は,労働者を守るという目的ですので,パートタイマーやアルバイト,派遣社員などはもちろんのこと,たとえ不法就労の外国人労働者であっても,労働をしている以上,適用されます。

 

2017年の埼玉県の最低賃金は871円です(ちなみに東京は958円です)。

ですから,街中のアルバイトの募集広告に,安いところでも800円台後半で,700円台が皆無なのは最低賃金法上,当然なのです。

 

一方,私が高校生の頃の埼玉県の最低賃金は611円でした。

そうすると,当時,高校生のアルバイトの時給が700円台や600円台であるのも,最低賃金法上は何の問題もないのです。

 

なるほど,なるほど,そういうことか,すべて納得・・・・。

 

いやいや,当時と今の物価にそこまでの変動はありません(最低賃金法以外の労働法制や社会環境に変化はあると思いますが)。

それなのに,当時の私の友達は,700円台や600円台でこき使われていました。

長い間働き続けて,時給がようやく800円に上がり,ガッツポーズを繰り出している友達もいました。

私は自分の時給を自慢げに話していました。

 

でも,今の基準で考えると,あのガッツポーズに虚しささえ覚えます。

自分たちの労働力は,今の高校性の労働力に比べてそんなに安いとは思えないのに。

納得できません。

 

今が高すぎるのか,あの頃が安すぎるのか・・・。

おそらく後者でしょう。

 

あの頃の最低賃金法は,労働者に優しくなかったですね。