刑の一部執行猶予制度

弁護士 柳沢里美

 

先日,刑事裁判で一部執行猶予判決を求めました。

 

一部執行猶予とは,懲役刑などが言い渡される場合に,刑の一部の期間について,その刑の執行を一定期間猶予する制度です。

例えば,「被告人を懲役2年6月に処する。うち懲役6月の執行を2年間猶予する。」というような判決が言い渡されます。

 

これまでは,実刑が全部執行猶予の制度しかありませんでしたが,平成28年6月から,刑の一部執行猶予制度が始まりました。

実刑となり,刑期を終了すると,受刑者はそのまま社会に放り出されます。

そのため,社会内で更生のための処遇を受けることがなく,再犯を繰り返してしまうことが多くあります。

一部執行猶予となれば,まず猶予されなかった期間を刑務所で過ごし,その後,執行猶予とされた期間を,社会内で過ごすこととなります。

執行猶予とされた期間にまた犯罪をしてしまうと刑務所に再収容されてしまうので威嚇力が働き,また,その期間に保護観察を受けるなどして,再犯を防止するのがこの制度の目的とされています。

そのため,再犯率の高い薬物事案などにその有用性が認められています。

 

一部執行猶予は,実刑か全部執行猶予か悩ましいときに中間の刑として言い渡されそうですが,そうではありません。

あくまでも,実刑が相当と判断される場合に,一部執行猶予とするのかが検討されるのです。

 

先日の私の事案も,実刑が予想される事案で,制度を理解した被告人の意思を踏まえ,一部執行猶予判決を求めました。

一方で,検察官は,本件は一部執行猶予には馴染まないと言ってきました。

その理由は,「再犯の可能性が高いから」と言っていました。

しかし,一部執行猶予の制度はそもそも再犯防止が目的とされており,再犯の可能性が高い事案こそ,その対象となるはずです。

検察官の論告に疑問を感じていると,裁判官も同じように感じたようで,検察官にその点を突っ込んでいました。

 

この事案の判決はまだ出ていません。

いかなる結論になるのか分かりませんが,被告人が真に更生してくれることを願います。