家守綺譚

事務局I

 

 

梨木香歩さんの著書の中で,一番好きな本です。

 

 

「それは,ついこのあいだ,ほんの百年すこし前の物語」の時代設定なので,舞台はおそらく明治頃。

 

亡き友人の残した家で家守をする売れない物書きの綿貫征四郎が,人ならざる存在と共存していく日々が淡々と描かれています。

 

その家では,亡き友人が掛軸からひょっこり現れたり,百日紅に懸想されたり,白木蓮がタツノオトシゴを身ごもったり。

 

それぞれの掛け合いが楽しくて,登場する人も動物も植物もみんな魅力的です。

 

私の一等お気に入りのエピソードは「ホトトギス」。

近所の寺に来た不思議な尼を介抱するとそれは信心深い狸で,化かしたお詫びに籠いっぱいの松茸と一茎のホトトギスを届けてくれるという心温まるお話です。

 

一編が数ページほどの内容の短編集で,和製ファンタジーのような作品。

やさしくて,ちょっぴり切なくて,どことなく懐かしさを覚える。

秋の夜長にぴったりな本です。