「家族教育支援法」って?

弁護士 鈴木幸子

 

今国会に「家庭教育支援法案」が自民党から密かに提出されました。

実は,第一次安倍内閣の教育基本法の「改正」に始まる「教育改革」の総仕上げとも言える重要な法案です。

 

安倍内閣の下での「特定秘密保護法」の強行採決,「集団的自衛権」の行使を容認する閣議決定,「安全保障関連法」の強行採決,つい先日の衆議院予算委員会での「共謀罪」法案の強行採決,そして,安倍政権が掲げる経済政策である「世界で一番企業が活躍しやすい国づくり」と密接に関連しています。

これらの安倍政権の政策を推し進めるためには,異を唱えることなく,与えられた任務・職務に唯々諾々と従う国民・労働者こそが必要なのです。

 

「改正」教育基本法には,「職業及び生活との関連を重視し,勤労を重んずる態度を養う」「伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養う」等,子どもの自由と個性を重んずる旧教育基本法にはなかった言葉が並びます。さらに,「教育改革」は,道徳教育の教科化,教科書検定基準・教科書検定審査要綱の改定,学校教育指導要領の改定により,学校教育の「改革」をほぼ完了し,家庭教育の「改革」に進み,「家庭教育支援法案」の提出に至ったのです。

 

この法案は,安倍首相が会長になって2012年4月に発足させた「親学推進議員連盟」が長年立法化を目指してきたもので,表向き「子どもたちのために,子育て家庭を支援する」ことを目的とするとしつつも,真のねらいは,あるべき「家庭教育」を定め,国が家庭に介入していくことにあるのではないでしょうか。

あるべき「家庭教育」とは,「親学推進議員連盟」が掲げる「伝統的な子育て」=「戦前の家庭教育への回帰」,例として,「子守唄を聞かせ,母乳で育児」「早寝早起き朝ごはん」等を挙げています。戦時中,「戦時家庭教育指導要項」で,大東亜戦争の目的を完遂するためのあるべき「家庭教育」が定められ,「母親学級」が開設されて国が家庭に介入していく構図と酷似しています。

現に,法案提出に先立って,すでに,家庭教育支援条例が各地の自治体で着々と制定されつつあります。その内容は,岐阜県条例を例にとると,家庭学級の開設,家庭教育支援員の配置などにより,あるべき「家庭教育」の普及を図る内容となっています。家庭教育を通して一定の価値観を押し付けることは,子どもの思想・良心の自由(憲法19条)や学習権(憲法26条)を侵害するとともに,家族生活における個人の尊厳(憲法24条)をも否定するものにほかなりません。

 

今,子育て家庭の支援を言うのであれば,財政的な支援等の子どもが育ちやすい環境の整備こそが国や自治体の急務だと思います。