韓国の法曹一元制度

弁護士 沼尻隆一

 

 

韓国では,文在寅(ムン・ジェイン)氏が新大統領に就任しましたが,ご承知のとおり,同氏は韓国で,弁護士の資格を持っています。

 

ところで,韓国では,数年前から,日本にはるかに先駆けて,「法曹一元制度」というものを導入していることを知っていますか?

法曹一元制度というのは,分かりやすく言えば,弁護士や学者(あるいは検察官)の経験を,一定期間有する者だけが,裁判官になれる制度のことをいいます。

韓国でも,従来は,日本と同様に,司法試験に合格して研修所を卒業すると直接裁判官に採用されるような仕組み(「キャリア・システム」といいます。)がとられていました。

 

弁護士など,在野での法曹経験がないまま,若い時から裁判所という国家組織の一員として,いわば「純粋培養」されますので,どうしても官僚的な(行政に追随する)判断をしがちであるとか,一般人の常識と少々かけ離れた判断をしがちである,などといった問題点を指摘されることがありました。

(ほかにも韓国では,「前官礼遇」といった特有の問題もあったようですが,日本の実情とは関係が薄いため,ここでは触れません。)

アメリカやイギリスのような「英米法系」(コモン・ロー〔市民法〕諸国ともいいます。)の国々では,法曹一元制度がむしろ一般的となっており,フランスやドイツといった「大陸法系」の国々でも,オランダやベルギーなど,法曹一元制度を部分的にでも実現している国が多くなりつつあるようです。

 

日本でも,裁判所法42条は,判事の任命資格を裁判官(判事補)に限っておらず,10年以上の弁護士等の経験を有する者にも認めておりますし,現実に,戦前,戦後の一時期に,まとまった数の弁護士が裁判官に任官した時期もあったようですが,その後,昭和30年代に入り,判事の任命については,司法研修所終了後判事補に任命され10年以上在職した者から任命されるのが通例となっていきました。

 

その後,わずかですが状況が変わり,いわゆる「弁護士任官制度」の導入によって,実務経験を有する弁護士が裁判官に任官する場合も出てまいりましたが,それとて,平均して年間一けた台にすぎません。

かって,政府の臨時司法制度調査会の意見書においても,「法曹一元の制度は,これが円滑に実現されるならば,わが国においても一つの望ましい制度である。」と結論付けられています。

 

韓国ですでに実現していることが,わが国でも実現できないはずがありません。私は,法曹一元制度は,広い意味では,より民主主義的な司法の実現に,きっと役立つのではないかと考えています。