「その説明じゃ分からないよ」

弁護士 守重典子

 

私には,喜寿になった祖母がいます。

 

ユーモア溢れるばあちゃんで,私も昔からおばあちゃんっ子です。

 

ですが,私が司法試験の受験生として,これまでの人生の中で一番勉強を頑張っているときであるにも関わらず,

 

「司法試験に受かるなんて夢のまた夢よー」
「あきらめてどこかに就職した方が良いんじゃない」

 

などなど,悪気があるんだかないんだか,人のやる気を削ぐようなことを言ってくることもあるマイペースばあちゃんです。

 

もっとも,司法試験に合格したときに一番喜んでくれたのもおばぁちゃんだったので,私が批判的なことを言われると,「今に見てろよ」と燃えるタイプなのを見越して,あえて応援していないようなことを言っていたのかもしれません
が……。
本人に聞いても,すっとぼけて答えてくれないので,真相は分かりません。

 

 

 

さて,今回のコラムのタイトルは,そんな祖母が私によく言ってくるセリフです。

 

祖母は,私が司法試験の受験生のときも,試験に合格して弁護士になってからも,法律に関することでいろいろな質問をしてきます。

 

「執行猶予ってなんなの?」とか,
「離婚の財産分与ってどういう風に分けるの?」とか,
「法テラスって何?」とか,
「元裁判官とか元検察官とかいるけど,弁護士から裁判官にはなれるの?」とか,

 

おそらくテレビのワイドショーを見ていて引っかかったのであろう疑問を溜めておいて,私がたまに祖父母の家に遊びに行くと,ストックしておいた質問をバシバシぶつけてくるのです。

 

そういった祖母からの質問に対し,私も答えはするのですが,その説明が難しかったりすると,

 

「その説明じゃ一般の人には分からないわよ」

 

という言葉を返されてしまうのです。

 

まだ司法試験の受験生だった頃は,そんなこと言われてもあまり気にも留めませんでしたが,
弁護士として実際に相談を受けるようになってからは,祖母の言葉が身に沁みるようになりました。

 

というのも,日々の法律相談で,相談者の方からいろんな質問や相談を受け,当然その質問に回答することが期待されているわけですが,「聞いていても分からない」ような説明をしただけでは,結局,自己満足で終わってしまうことになってしまうからです。

 

なので,相談に来られた方が,私の祖母のように
「その説明じゃ分からない」
といった気持ちを持ったまま相談が終わるということがないように気をつけなければと常に思うようになりました。

 

 

 

ですが,無意識のうちに難解な法律用語をつかったりしていなかっただろうかなど,やはり不安になることもまだまだ多いので,祖母に練習台になってもらって,「その説明じゃ分からない」といったダメ出しがなくなるくらいまで,分かりやすく説明できるようになりたいと思っています。

 

ダメ出しはたくさんしてきますが,相談料の代わりとして,ピザやお寿司などをご馳走してくれるので,次に祖父母の家に行くのが楽しみなような,恐ろしいような複雑な気持ちです……。