相続法の大幅改正へ向け「中間試案」

弁護士 鈴木幸子


戦後,家制度の廃止にともない,新民法のもと,新しい相続制度が規定されました。それから70年余りの年月が経過し,高齢化が進むと共に家族のあり方も多様化してきました。法務大臣の諮問機関である法制審議会相続関係部会では,このような社会情勢の変化を踏まえ,相続制度の大幅改正へ向けて議論を進め,6月21日,「中間試案」をまとめました。受任事件や家庭裁判所の調停委員の経験(生前から法定相続人間でもめることが予測されるケースでも,遺言を残しているのは稀です)から,現行法の相続制度に様々な疑問や不備を感じていた者として,問題点は含みつつも非常に興味深い内容です。法務省は,この「中間試案」を公表し,7月から9月までパブリックコメント(意見の公募)を実施して,2017年中には民法改正案を国会に提出する予定です。以下に,主な内容をご紹介しましょう。

 

〝亡くなった夫所有の自宅不動産に居住している妻の居住権の保護〟

遺産分割の対象財産が自宅不動産とわずかな預貯金のみという場合,残された高齢の妻が,親の遺産をあてにしている子どもたちから,売却処分して立ち退きを求められる恐れがあります。

第1案 遺産分割によって自宅不動産を取得する人が決まるまでの間無償で居住する権利 (短期居住権)を認める。
第2案 終身または一定期間居住する権利(長期居住権)を認める。

 

〝妻の相続分の見直し〟

永年夫と連れ添って夫名義の資産形成に貢献した妻の寄与分を認めようとするものです。

第1案 亡くなった夫の財産の婚姻後増加額×妻の法定相続分より高い割合(例えば法定相続人が妻と子の場合,3分の2)+(遺産分割の対象財産-婚姻後増加額)×妻の法定相続分より低い割合(例えば法定相続人が妻と子の場合,3分の1)

  上記金額が妻の法定相続分を超えるときは,妻が超過額の加算を請求できる。
第2案 夫死亡時,婚姻成立の日から20~30年経過しているときは,妻の法定相続分を引き上げる(例えば法定相続人が妻と子の場合,3分の2。法定相続人が妻と兄弟姉妹の場合,兄弟姉妹に法定相続分を認めない。)。

 

〝法定相続人以外の者の寄与分〟

長男の親に対し,無償で療養看護等の労務の提供をした長男の妻の寄与分を認めようとするものです。

長男の妻が,長男の親が亡くなったことを知った時から一定期間内に,法定相続人に対し,金銭の支払いを請求する権利を認める。