見沼田んぼ視察

弁護士 鈴木幸子

 

寒風吹きすさぶ1月下旬のある日,さいたま市の「見沼田んぼ土地利用審査会」が企画した現地視察に審査会の一員として参加した。

 

土呂駅から徒歩10分の「市民の森・見沼グリーンセンター」に集合。

車で芝川(桶川市の台地を水源とし,桶川市,上尾市,さいたま市,川口市を流れて荒川に注ぐ)に沿って南下し,大宮第二公園の中にある芝川第七調整池(ひょうたん池)を経て,昨年審査した案件の現場へ。

周辺は古い住宅が密集しており,見沼田んぼのイメージとは程遠い。

 

私の本業もそうだが,現地調査は重要である。

 

そもそも,昭和33年9月の狩野川台風による洪水をきっかけに見沼田んぼの遊水機能が注目され,昭和40年ころから原則宅地化を認めないとされた。恐らく,それ以前に建築された住宅であろうとの説明を受けた。

平成7年には,見沼田んぼの治水機能を維持しつつ,農地・公園・緑地等として利用する方針が明確に打ち出された。

さらに南下して,「(さいたま市)合併記念見沼公園」へ。隣接して,自治医大医療センターと防災センターがある。

「合併記念見沼公園」は湿地に木道が設置された広々とした公園で,さらに南に広げる計画(セントラルパーク構想)があるそうだ。

このあたりは,見沼田んぼの自然が保護されており,ほっとする。

 

さらに南下すると,広大な農地が開ける。

「大原サッカー場」も見えるが,高速埼玉新都心線が見沼田んぼを縦断している異様な光景が印象的だった。

田んぼはほとんどない。大部分が植木畑や野菜畑。「県民ふれあい農園」も点在する。

見沼田んぼで農業を営む人材を育成するための「就農予備校」研修用の畑もある。研修を終えると3年間は年間150万円の資金援助を得られるが,結局自立できずに廃業というのが現状らしい。

 

車は,見沼代用水東縁に沿って走る。

途中の國昌寺近くに「斜面林」が残っている。

代用水と接する周辺の住宅地にもその名残があちこちに見受けられ,原風景に思いを馳せる。

 

「見沼ヘルシーランド」「大崎園芸植物園」「浦和くらしの博物館」等を横目に見ながら,最終目的地である「芝川第一調節池」へ向かう。

さいたま市と川口市をまたぐ、500万トンの水を貯留できる巨大な調節池(東京ドームの20倍の広さ)である。

すぐそばを武蔵野線が走り,周辺にはマンションも建つ。

この調節池の完成と未整備区間での河川改修によって,芝川の治水安全度がさらに向上するそうである。

調整池の整備にあたっては,生息する動植物の保護のために,森や湿地,けもの道を復元するなど自然環境を守るための工夫が随所に施されていた。

構内にある事務所の屋上から見渡すと,360度の眺望が開け,夕暮れ前の冬晴れの真っ青な空が貯水池に映ってとても美しかった!

 

夕闇のなか,「見沼通船堀」(パナマ運河に先立つこと150年というのが自慢!)を見学して帰路に着いた。

 

半日,駆け足での視察だったが,見沼田んぼのほぼ全容を観察することができた。

気候が良くなったらゆっくり散策してみたい。首都圏に数少ない貴重な自然環境を次世代に引き継いでいきたいとの思いをより一層強くした。

 

とはいえ,都市化が進み高齢化などにより農業が衰退する中,広大な見沼田んぼを維持管理し,農地(そのほとんどが私有地)としても有効活用していくことは容易なことではないことも実感した。

都市開発の誘惑とのせめぎ合いのなかで,埼玉県民の見識が試される。