反省の言葉

弁護士 河原﨑友太


担当した覚せい剤取締法違反(使用)被告事件


今まで覚せい剤の使用事件はそれなりの件数担当してきたが,被疑者・被告人の方々は一様に,


「もうやらない。」
「むしろやりたくない。」
「やらないから大丈夫です。」


と述べてきた。


彼も当初はその例に違わず,


「捕まってから一度もやりたいと思っていない。」
「本当はやりたくない。」
「だからやめられる。」


そう話していた。


ところが,第1回公判の1週間前。

打ち合わせに行った際の彼の様子が明らかに変わっていた。


よくよく聞けば,彼が患っているうつ病の影響か,


「気分が大きく落ちた。」
「その気分が非常に落ちた際に覚せい剤を使いたいと思ってしまった。」
「今まで全くこんな気持ちにならなかったのになってしまった。」
「自信がなくなった。」
「拘置所という場所だから使わなくて済んだけど,そうじゃなかったら使っていただろう。」


とのこと。


続けて,


「自分が社会に出たらまた使ってしまうかもしれない。」
「だから,こんなに良くしてくれている身元引受人の方を裏切ってしまうのが怖い。」
「だから,情状証人としての出廷をやめてほしいと手紙を書いた。」


と。


彼の身元引受人は,彼が半年ほど前に偶然知り合ったNPO法人の代表理事の方。
幼いころから虐待を受けて育ち,身内と呼べる人がいない彼が,初めて大きな信頼を寄せられると思った方だった。
そして,その身元引受人の方も,短い付き合いにも関わらず,彼に非常に親身に寄り添ってくれていた。


そんな身元引受人のことを考えて,彼は先に述べたような発言をしたようである。


当日,身元引受人の方は情状証人として出廷し,彼の更生の手助けをすると証言してくれた。


彼は,裁判官に対して,素直に,覚せい剤をやめる自信がなくなった気持ちを吐露した。


だから,情状証人の出廷を避けてほしいと思ったことも,それでも来てくれたことがうれしいということも。




判決日。


裁判官は,判決を言い渡すとともに,


「この公判廷で,覚せい剤をやめる自信がなくなったと素直に言った気持ちを大事にしてほしい。」
「あなたが覚せい剤をやめられることを信じています。」

と彼に伝えた。


覚せい剤の依存性は非常に高い。


彼の「やめる自信がなくなった」という言葉は,彼が覚せい剤ときちんと向き合った結果である。


そして,その言葉は,「やめます。」の一言よりもよっぽど反省を示す言葉だったように思う。